第11話 本当の自分
11-1 結婚したい男
「今日もダメだったかあ」
太田 義弘 39歳
婚活パーティーの帰り道。
彼の婚活歴は五年、身長172cm、体重78kg学生時代より十キロも増量し、体型はおじさん体型まっしぐら、これといった特技もなく、取り柄といえば、一つの会社で十年以上真面目に働き続けていることくらいだった。
好みの女性は身長150から160くらいで華奢な体型、性格は明るくて穏やか、年齢は45くらいまでならOK。自分ではそんなに高望みではないと思っている。
幾度となくチャレンジし、ある時は婚活スクールにまで通った義弘だったが、なかなか運命の相手とは出会えていなかった。
今日の婚活パーティーでは、連絡先すら交換できず、完全なる敗北に終わり、自分の不甲斐なかに、打ちのめされていた。
(あと二ヶ月で四十だというのに……こりゃ四十独身決定だな)
自宅アパートのそばにあるコンビニに吸い込まれるように入っていった義弘は、菓子パンやドリンク、ラーメンを籠に放り込んだ。
レジを済ませレシートを受け取ると、そのレシートに「お客様に耳寄りな情報」という情報が載せられているのを見つけた。
いつもなら片手で握りつぶし、ゴミ箱に捨てる義弘だったが、この日はなぜか気になって、その下にあるQRコードを読み取ってみた。
「解決したい悩みはありますか? はい いいえ」
最初にこの文字が現れた。
(なに、これ……)
義弘が「はい」をタップすると、
「入浴すると、悩みを解決できる入浴施設があります。行ってみたいですか? はい いいえ」と次の質問が現れた。
(広告かよ。くそだな。……でもそんな風呂あるなら)
続けて「はい」をタップすると、
「入泉料五百円」という文字とともに、那楽華までの地図が表示された。
(やっぱ広告じゃねえかよ。……でも近いな、すぐそこじゃねえの。そんなのあったか?)
義弘は広告に乗せられたような気もしたが、そのまま行ってみることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます