9-5 二度目の願い
省吾が浴室に入ると、梢女という店員は洗い場の整理をしているところだった。
「こずめさん」
「あっ、金子様、いらっしゃいませ」
「なぜ俺の名前を?」
「タオルレンタルの時、記入されましたよね」
「ああ、なるほど。それより、電話助かりました。いくら探しても見つけられなくて……」
「私の方も、もう少し早くお電話しようかとも思っていたのですが、二度目はそれなりの覚悟を見せていただく必要がありましたので、しばらくあなた様を観察しておりました」
「覚悟……ですか?」
「そうです。当方の決まりで二度目からは有料となっておりまして、…もちろん後払いですけれど。前回のように入泉料だけでご希望に添う事ができない決まりとなっているものですから」
「なあんだ、そんなことでしたか。それなら大丈夫! ここを探している間に全てを解決できる方法を見つけましたから。払いますよ。利用料金」
即答する省吾に一瞬驚いた表情を見せた梢女だった。
「では、その解決方法、お聞かせください」
「これから永遠にギャンブルで負けない。これが解決法です」
「解決方法は、その一つでよろしいのですか? 今回は複数でも可能ですが…」
「大丈夫です。これさえ叶えば、全てうまくいくはずですから」
「そうですか。それではこちらへおいで下さい」
省吾は浴室の一番奥にある黒いドアの前に導かれた。
どう見てもスタッフオンリーといった扉だ。
梢女がそのドアを開けると薄暗い部屋が現れた。
数本の蝋燭だけで照らされた部屋の中には、大人3人くらいが入れる大きさの岩風呂があった。
「このお風呂に浸かり、先程の解決策を強く念じて下さい」
「それだけですか?」
「はい、それだけでございます。……私も金子様の願いが叶うよう、願っております」
「では、ごゆっくり」
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