9-6 岩風呂
梢女が出て行くと、省吾は恐る恐る岩風呂に足を入れた。
よく言えば雰囲気のある……悪く言えば不気味な浴室である。
(信じるものは救われる……だ。ギャンブルで負けない俺にして下さい)
省吾が手を合わせ、念じた瞬間! 浴槽の水面がブクブクと泡立ち始めた。その泡は次第に大きくなり、省吾を取り囲んだ。
その影は無数の人の影のようにも森の中の木々のようにも見えた。
動くことも声を出すこともできず、恐怖におののいていると、足首に何かが絡みつき、引きずり込まれた。
真っ暗な海に深く深く沈められるように、終わることのない暗闇に抗うこともできない省吾は意識を失った。
「大丈夫ですか」
省吾の目の前には、初老の男性がいた。
「あっ、目を開けたよ」
「良かったあ、道に倒れてるからびっくりしたよ」
省吾を囲む大勢の人の声が聞こえてきた。
「救急車呼んだから、そのまま寝ていた方がいいよ」
省吾はフラつきながら立ち上がり、周りの人にお辞儀をして、自宅の方向に足を進めた。
「あれは夢だったのか」
無駄とは思いながらスマホを見たが、なんの履歴も残ってはいなかった。
帰宅途中、パチンコ屋が見えた。
(一つ試してみるか)
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