6-2 相談
京子は何か不思議な運命のようなものを感じて、那楽華へ行くことにした。
一人で行くつもりだったが、照雄に黙って行くと怒ることもあるので、一応声をかけた。返事は予想通り「お前一人で行ってこい」だった。
那楽華までの道のりはすごく単純だったので、地図を一度見ただけで迷うことなく到着できた。
「本当にあったんだ。でも、造りも古そうだし……どうしてこれまで知らなかったんだろう……」
京子は受付を済ませ、脱衣所に向かった。
ロッカーに荷物を入れ、服を脱ごうとしたところで、店員から声をかけられた。
「お客様、いらっしゃいませ。私、お客様の悩みを担当いたします梢女と申します」
京子は一瞬なんのことか分からなかったが、「ここに来るだけで、悩みを解消できる」とゲームに現れた鳥が言っていたのを思い出して、納得した。
二人は脱衣所の端にある椅子に腰掛けた。
「何か悩みをお持ちなのではありませんか?」
梢女という店員はいきなり話を切り出してきた。
「ええ、実は……」
と言って、京子もためらうことなく悩みを打ち明けた。目の前に現れた自分と同じくらいの年齢の店員に不思議と安心感を抱いたからだ。
拓哉が二年前から、あるゲームを始めたことで、ほとんど寝ずにゲームを続けていること、仕事を探すのを諦めて、バイトを四時間程度やって、あとはほとんどゲームをして1日過ごしていることなどを話した。
「では、ゲームが全ての元凶なのですね」
梢女が言うので、京子は頷いた。
「どうすればやめると言っていますか?拓哉さんは」
「一度だけ聞いたのですが、『分からん。このゲームが終わるまでやり続けるかも……』なんて言ってました」
「では、ゲームを終わらせることで、解決できそうですね」
それができたら苦労しないし、そんなことできないのよ。と言ってやりたかった京子は、適当に返事を返した。
「はあ、まあ……私、ゲームのことはよく分かりませんが……」
「では、明日の二十三時ごろ、拓哉さんのゲーム画面を覗いてください。きっと、お客様のご要望にお答えできると思います。……では、那楽華の湯をお楽しみください」
梢女はそう言うと、脱衣所から出て行ってしまった。ゲームの画面と聞いた京子は、PCに現れた鳥を思い出した。
「このお風呂、ゲームと何か関係があるのかしら」
ゲームやPCの知識が皆無な京子は、それ以上の疑問を持たずに梢女の話を信用し、浴室へ向かった。
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