6-3 戦士 拓哉

 次の日の二十三時、京子は梢女が言う通り拓哉の部屋に入った。


 拓哉はまた寝落ちの最中だったが、京子がパソコンを見ると、ゲーム画面だけは動いていた。


 真ん中に、鎧を着たキャラクターがいて、何かを叫んでいる。


「うあ、何これ!どうして?」


「どうしたんですか?」


 京子は思わず問いかけた。


「えっ、母さん?俺が見えるの?」


 京子はそのキャラクターが拓哉であることを、瞬時に理解した。


「拓哉なんだね」


「やっぱり母さんなんだ。……俺、よく分からんけど……ゲームの世界にいるみたいだ。夢見てるんだろうか、俺……」


 京子は、現実の拓也は寝ているということを伝えた。


「そうか、安心したよ。俺って、ゲームやりすぎてるから、こんな夢みるんだ。しかもここ、ドルフヴェルム城……まだ三人しか辿り着いていない最後のステージだ」


 なんだか嬉しそうにしている拓哉の周りに、たくさんのメッセージが現れた。


「タックンいきなりラスボス?石まだ二つしか集めてないとか言ってなかった?」

「その装備何?どれも現時点で最強じゃん」

「四人目の城到達者だね。頑張ってラスボス倒したら一番乗り。……歴史に残るね」

「やっぱり最後は一人で行くんだ。回復どうするんだろ……」


「拓哉、お前の周りに何かたくさん文字が現れているよ」


「フレンドが騒いでるだけだから。放っといて。……それより、夢なら夢で楽しみたいから、今から奥に進んでみるよ」


 拓哉は両手で巨大な城の扉を開けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る