1-8 二度目の依頼

 現在の那楽華──


「最初の依頼で解決したと思っていたのにね」


「俺も始めは新しい学校でうまくいってたんだ。けど、なぜか日にちが経つごとに、今まで普通に話していたやつも離れていって……無視という形のいじめがなぜか始まってしまった。今は誠也のせいだって分かったけど、あの頃は自分が悪いんだという嫌悪感ばかりが先行して……」


「自殺しちゃったのよね。私は奏多が悩んでるの知ってたからもう一度那楽華に呼ぶつもりでいたのに……あっさりと逝っちゃった。けど自殺者は天国にも地獄にも逝けず、現世に縛られる」


「呪縛霊になったことにも気付いていない俺のところに、梢女さんが来た時はビックリしましたよ」


「私もこれが仕事だからね。珍しい出前相談」


「そこであなたの出した解決策は、誠也からの謝罪。……それだけ。二回目の依頼の代償は自分の魂だというのに」


「俺にとっては現世こそが地獄でしたから。転生してまた現世に戻るくらいなら、いっそ魂を消滅してもらった方がすっきりする。今もその気持ちは変わりませんよ。だから、ほら、気が変わらないうちに……」


奏多はさっぱりした表情で、梢女を見た。


「それが残念だけど、あなたの二回目は執行されないのよ」


「?」


「奏多に謝罪したのは、誠也自身の願いからなの。彼はそうすることで悪夢から解放されることを私に依頼したの」


「じゃあ俺は?」


「ここは奈落の湯。一週間かけて、自分にふさわしい地獄を見つけなさい。まあ、自殺者が行くところはほぼ決まってるんだけどね」


突然の方向転換に奏多は戸惑った。


「一週間で決められないとどうなるんですか?」


「地獄の最下層に落とされるらしいわ。きっとあなたのいた現世より怖い所よ」


 梢女は笑いながら去って行った。




 梢女は去りながらあることを思い出していた。


「そう言えばあの子の目。……いいわ放っておきましょう。どうせ時限的な能力だし。ウフフ……」


 誠也は梢女の力で一ヶ月程度霊が見えるように変えられていた。悪夢から解放された誠也は、今度は不特定多数の霊に囲まれるという現象に悩まされるようになっていた。


「だ、だ、誰?嫌だあー!わあー、あっち行けー」


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