1-6 謝罪

 黙り込んだ誠也を、奏多は激しく問い詰めてきた。


「そのことを知った時の俺の気持ちが分かるかい?友達だと思っていたやつに裏切られた者の気持ち……直接いじめたやつよりずっと酷い。だから聞いたんだよ。何しに来たって」


誠也は恐怖で顔を歪め、この場から逃げ出したくなった。


「俺は……俺は羨ましかっただけなんだ」

「中学の時は奏多の方がずっと背も低くて、俺の方がバスケうまかったのに……いつのまにか身長伸びて、一年で唯一のレギュラーになって……それが羨ましくて、悔しくて……本当は少しだけお前の評判を下げるつもりだったんだ。それで終わるつもりだったんだ。……本当に悪いと思ってるよ。まさか……まさか自殺するほど苦しんでいたなんて思わないじゃないか」


「ふっ……何を言っても言い訳にしか聞こえないよ。見苦しい。お前は自分より下の存在の俺がいることで、自分を保っていた。そういうことだろ?……思い出してみると小学校の頃からそうだったよ。誠也は結局友達なんかではなかったんだ。謝れよ。俺に……」


誠也は両手をつき頭を下げた。


「ごめん……なさい」


恐怖で頭を上げることができなかった誠也に、奏多から思いもかけぬ言葉が返ってきた。


「もういいよ。これで俺の思いはかなったから……許すよ。誠也」


その一言を言うと、奏多の姿は見えなくなった。


一人残された誠也はしばらく茫然と立ちすくんだ。

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