3-3 母の休養

「やっぱり大きなお風呂はくつろげますよね」


「えっ、えー」

 純子はぎこちなく答えた。


「少しお話ししませんか?……私、梢女こずめといいます」


「こずめさん……ですか。珍しいお名前ですね。私は本木純子といいます」


「純子さん……と呼んでいいですか?」


 純子は軽く頷いた。


「実は純子さん……私……その背中のアザが気になってしまって、お隣に来てしまいました。……あっ、気に障られたらごめんなさいね」


 純子は顔をしかめた。一番触れて欲しくないことを、初対面の相手にズバッと言われたからだ。


 純子の体にはいくつかのアザがあった。それは諭の暴力を受けたためにできたものだった。


「ちょっと転んでしまいましてね。気になさらないでください」


「そうですか……それならいいのですけれど……私も数年前までそんなアザが絶えないことがありましてね。原因はお恥ずかしいのですが、息子の暴力によるものでして……それは大変で……今もここの傷跡が消えないんですよ」

 梢女は右肩の傷を指差した。


 梢女が話す家庭内暴力の話を聞きながら、純子は次第に親近感を持ち始めた。


「私も実は……」


 純子は苦しい胸の内を話し始めると止まらなくなった。


 梢女はそんな純子の肩を叩き、励ました。

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