第34話 攻め込み


(一週間って......)


 あまりにも早すぎる。ラファエル様やミカエル様が数日後とは言っていたが、もっと遅いと思っていた。


「後一週間ってどうしよう......」

「そうだな。やれることをやるしかないよな......」


 今焦ってもやれることは限られる。焦りすぎて、逆に準備が整わない方が危ない。だから今はウリエル様とエリクソンさんの話し合いでどれぐらいまで止められるか、そしてミカエル様たちがどれぐらい早く援護してくれるかがカギだ。


(はっきり言って今は祈るしかできない)


「そうね」

「あぁ」


 そこから、四人で内容を詰め始めた。


 そんな日が数日続いて、あっという間にエルフ国についてから数日が経ち、俺たちが何をするのかの方向性が固まってきた。まず最優先事項としてみんなが生きること。そしてその次にルーナがなせば成らなければいけないことの援護を俺たちがすること。


 この二つが大まかな内容であり、細かい内容としては、まず最初に魔族が攻め込んでくるのを俺たちで止めて、住民を守る。そして、前線で戦闘が無理そうだと判断したら後退して行って王宮などを守る方針になっている。


(俺もこの国は救いたいしな)


 ランドリアは母国だが、エルフ国や狐人国も俺にとっては第二の母国みたいなもん。だからこそ、できる限り力になりたい。そう考えながら、国内を歩いていると


「見た目はわからないけど、徐々に防衛線が固くなってきたね」

「そうだね」


 ルーナの言う通り、見た目ではわからないが、エルフの戦士たちの装備が先程よりもよくなってきていたり、心構えが変わってきているのが分かる。


 それに加えて前線には魔法使いが増えて、最初の一線で一斉に魔族を倒すのだなともわかる。


「今日はどうする?」

「明日、ラファエル様たちと最後の打ち合わせだから、今日はオフにしよう」

「「「え? でも......」」」

「今休んでおかなかったら、心身的に持たなくなる。だから今日はオフにするんだ」


 そう、戦争は長い。毎日気を引き締めておくことなんてできない。それこそ、スタンピートが着た時は俺たちが異常だっただけ。


「わかったわ」

「うん」

「わかりました」


 俺だけみんなと別れて町中がどうなっているかを確認して、王宮に戻った。その後、みんなと夕食を取って就寝した。そして次の日、全員で王宮に行くと、数日前とは表情が全員変わっていてホッとする。


(よかった)


 もし、まだこの場で覚悟を決めていない人が居たら、国中で覚悟を決めていない人が居るのかもしれないと不安になってしまう。そして、俺たちがエリクソンさんたちの目の前に行くと


「じゃあ最後の確認をはじめようか」

「はい」


 まず、俺たち四人と魔法使いの方々が最前線に立って、魔物を倒す。その後、戦士の方々と場所を入れ替わって、後方で前線の援護をする方針。


 それ以外にも細かい内容を全員で確認した。そして、俺たちが部屋を出ようとした時、徐々にだが、足音が聞こえてきた。


(え、もしかして)


 俺は窓に走って行くと、すでに魔物がこちらに近寄ってきていた。


(早くないか......)


 まだ一週間も経っていないのに......。そう思っていると、エリクソンさんたち全員が、不安そうな表情をしてこちらを見てくる。


「メイソンくん?」 

「もう魔物が近くに来ています......」

「どうすれば......。作戦が」

「今から俺たちが向かいます。エリクソンさんたちは他の方方に指示をお願いします」

「わかった」


 そして、俺たちが王室を後にしようとした時、エリクソンさんが


「ルーナを。みんなを頼む」

「はい」



 俺たち四人が急いで外に向かうと、エルフの騎士たちが住民を避難するように促していた。


(よかった)


 騎士たちがパニックに陥ってしまったら、国中がパニックに陥るのと一緒だ。だからこそ、この光景を見て少しホッとする。それに加えて、住民たちが避難できずに国中でまばらになっていたら、騎士の方々や俺たちが戦いずらくなってしまう。


 住民の方々が騎士の指示の元、避難を始めているところを見ながら、俺たち全員が走って最前線に着く。すると、もうすでに目視できる範囲に魔物が押し寄せているのが分かる。


(まじかで見ると、やっぱり多いな)


 目視できるだけでも、数えきれないほどの魔物がいる。俺は、それを見てもう一度アミエルさんに


「再度確認ですが、前線で良いんですよね?」

「はい。本当は中衛職ですが、そこはクロエさんにお任せします」

「わかりました。ではお願いします。みんな一旦ここにいる人に指示を頼む」


 俺がそう言うと全員が頷き、クロエとアミエルさんがルーナについて行きながら魔法使いの方々に指示をしに行った。


(俺はどうするか......)


 まだ見える範囲の魔物はそれほど強いとは思えないから、ここにいる魔法使いの方々で何とかなるとは思う。だが、もし悪魔が現れたら......。


(俺が何とかするしかないよな......)


 ここにいる人たちが悪魔を倒せるとは思えない。そう考えながらも、魔物が徐々に近づいてきて、魔法が当たる範囲に入った。


 その瞬間、ルーナが合図を出して、魔法使いの人たちが魔物に向かって攻撃を始めた。

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