第7話 魔族の進行具合


 ここにいる全員が呆然としていると、ルッツは一呼吸おいて


「俺が捕まっていた時の場所を覚えていますか?」

「あぁ」

「そこは前もお伝えしたと思いますが、人体実験を行っていた場所です。そして、実験は完成に近づいています」

「......」


(完成に近づいているって......)


 確か前言っていた内容は、神話の人物を蘇らせる実験だと言っていた気がする。それがすでに完成していたとしたら......。


「魔族は、仲間を増やすために他種族を魔族にする人体実験と死者を自由自在に操る実験をしています。そして前者はすでに完成の域に近づいている」

「リーフか......」

「はい。あの人が人族から魔族になれた時点で、ある程度目星が着いていると思います。そして魔族にする実験と同時に意識のある死者を蘇生する実験も行っていたため、そちらもある程度完成に近づいていると考えられます」


 言われてみればそうか。同じ時期に実験を行っていれば、最低限進んでいるに決まっている。もし死者を蘇生売る実験も完成に近づいていると考えるとゾッとした。


「なので姉さんにメイソン兄さん、クロエさんは気を付けてください」

「わかった。ありがとな」


 俺に続くように二人もお礼を言ったところでエリクソンさんが


「メイソンくん、もし困ったら私たちを頼ってくれて構わないから」

「ありがとうございます」


 そして、その後いろいろと忠告を受けた後、王室を後にした。そして、王宮を出た後、すぐに転移結晶を使って狐人国へ転移した。



 転移した後、すぐクロエがあたりを見ながらボソッと言った。


「懐かしい」

「そうだな」


 クロエの言う通り、懐かしい感じがした。なんせ、狐人国に最初に来た時はまだ、クロエと出会っていなかったし、クロエはレッドウルフから逃げていたから。


「早く行きましょう」

「あぁ」


 そして、クロエについて行くように狐人国に入ると、あたりにいた子供たちが俺たちに気付いて、笑顔でこちらに来て


「「「クロエ様、それに英雄様にルーナ様、お久しぶりです!!」」」

「みんな久しぶり! 後でみんなのところに行くから待っててね」

「「「うん!!!」」」


 子供たちと少し話した後、俺たちはすぐにクロエの実家に入って行く。すると、メイドの人たちが驚きながらもクロエの父であるロンローリ様のところに案内してくれた。王室に入ると、ロンローリ様は驚いた顔をしながら


「メイソンくんよく来てくれた!!」

「はい」

「でも、依頼したことはすでに終わっていてだな」

「え?」


(依頼したことって?)


 俺たちが首を傾げていると、ロンローリ様が


「依頼の件で来てくれたわけではないのか?」

「お父さん。依頼って何?」

「そうか......。だから来るのが早かったのか」

「だから依頼って何なの?」


 するとロンローリ様が深呼吸を挟んだ後言った。


「ここに魔族が来たんだ」

「「「え......」」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る