第2話 エルフの国の休暇
「懐かしい」
ルッツはボソッとつぶやきながら涙を流していた。
(まあそうだよな)
ルッツがどれだけエルフの国に戻ってきていないかわからないが、俺と比べれば、長い年月故郷に帰ってきていないと言っていい。それほど、時期が経っている。俺だって、ルッツぐらい故郷に帰っていなかったら、同じ行動を取っていただろう。
「ルッツ、早くお父さんとお母さんに会お!」
「うん」
その後、王宮に入るとメイドや執事のみんながルッツを見ると、涙を流しながらこちらに近寄ってきた。
「おかえりなさいませ。ルッツ様」
「みんなただいま」
そして王室に向かい、中へ入るとルーナの父、エリクソンさんと母であるユミルさんがルッツに駆け寄って抱き着いた。
「無事でよかった!」
「本当に、本当に無事でよかった」
二人は涙を流しながらルッツに語り掛けていた。
(よかった)
最初の目的がルッツの救出だったとは言え、このような光景を見たら助けられて本当によかったと思うし、今までの行動が無駄じゃなかったと実感する。
そこから数分程でエリクソンさんたちが元いた位置に戻って
「メイソンくん、そしてクロエさん。エリックを助けてくれて本当にありがとう」
「はい」
すると、ユミルさんも頬に手を当てながら
「本当に二人にはなんと言えばいいのか」
「いえ、自分たちもなすべきことをしたまでですので」
「そう言ってくれると助かるわ~」
「メイソンくん。今回の件も含めて、本当にルーナと婚約関係にはならないか?」
突然エリクソンさんから婚約話しを持ち掛けられてビクッとしてしまった。でも、しょうがないだろ。気構えていても驚くが、突拍子も無く言われたのだから。
「お父さん! それは私たちで決めることだからいいの!」
「あ、ルーナがそう言うならいいけど......」
ルーナが強く言ったため、エリクソンさんがシュンとした表情で俯き始めた。
「じゃあルーナとメイソンくん、クロエさんで我国の観光でもしたら?」
「え?」
「今までいろいろとやるべきことが多かったと思うの。だから今ぐらい軽い休息でも取った方がいいと思うの」
「あ~」
言われてみればそうだ。今まで休息と言う休息と取ったことが無かった。ここで休暇を取ったのも数日だったし、それも復旧作業とかで休暇と言えるかわかららないし。その時、ルーナは目を大きく開けて
「お母さんナイス! メイソンもクロエもどう?」
「私は良いと思うわ」
「俺も」
「じゃあ、決まりね!」
すると、ルッツがこちらに近寄ってきて
「じゃあメイソン兄さん、一緒に遊ぼう!」
「あぁ」
そう答えたが、すぐさまユミルさんがルッツの元に駆け寄り、小声で何かを言った。
「あ~。そう言うことね」
「うん。だからルッツはまた今後ってことね」
「は~い」
(??)
首を傾げながら二人のことを見ていると、ルッツが
「メイソン兄さん、遊ぶのは今度でいいや。三人で楽しんで!」
「あ、あぁ。でもいいのか?」
さっきまで、あんなに嬉しそうに言っていたのにあっさり断れると少し不安になる。
「いいんだ! だから三人で楽しんでよ!」
「わかった」
そこから軽い雑談を挟んで、王室を後にすると、この前会った騎士が
「ルーナ様。それにお二人ともお久しぶりです。三人の屋敷を用意していますので、着いてきてください」
「わかりました」
騎士の後をついて行くと、ランドリアで暮らしていた屋敷の数倍大きい場所に案内された。そして、三人で中に入ると、ルーナが
「じゃあ、今日から三人でいろいろなところに行こうね!」
「「うん」」
「私のお勧めは、精霊王の湖かな~」
「「え......」」
(精霊王の湖ってなんだ?)
それにそんな情報言っていいのか? ふとそう思った。
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