第16話 スタンピードの最前線


 ルーナはルッツの顔を見ながら


「ルッツ?」

「いや、でも......」

「ん?」

「今は勇者さんが言っている通り、スタンピードが起こっている場所に行こう」


(??)


 スタンピードの言葉を聞いた時から、少しだか行動がおかしくなった。ルッツは今、何を言おうとしていたんだ? もしスタンピードの止める情報があるのなら。いや、それならもう言っているだろう。


(だったらなんなんだ?)


 そう思っていた時、ロンドが俺が知っている転移結晶を渡してくる。


「これでまずはランドリアに向かおう」

「あぁ」


 俺たち全員で転移結晶を使って、ランドリアに戻った。



 目を開けると、クロエやシャイル、ミロが立っていた。そしてクロエがルーナの顔を見た途端抱き着いた。


「無事でよかった......」

「ごめんね。不安にさせちゃって」


 すると首を横に振りながら


「私こそあの時、もっとできることがあったかもしれない。だからごめんね」

「うん。でも私は無事だから大丈夫だよ」

「本当によかった」


 二人が話し終わったタイミングで、ロンドが聞く。


「それで今の状況は?」

「モンスターたちが徐々に後退して行って入るが、今も危ない状況に変わりない」

「そうか.......。じゃあ俺たちも最前線に行こう」

「え?」


 ロンドが言った言葉に対して、シャイルとミロが驚いた表情をしていた。


(まあ当たり前だよな)


 さっきまで、安全な場所でしか戦わない雰囲気を出していたのに、今は最も危険な場所に行こうと言っているのだから。


「国王には俺から言っておく。だからシャイルとミロはメイソンたちについて行ってくれ」

「わ、分かった」

「うん」


 そして俺たちの元へやってきたので、一緒に王宮を出て、最前線であるランドリア外に向かった。


 ランドリア内を歩いていると、住民たちは怯えた表情でランドリアの外を見ていた。


(これじゃエルフの国で起こったのと一緒じゃないか......)


 子供が泣いているところを見たり、人が死んで悲しんでいる人を見るのはもう嫌なんだ。そして一番心にきたのは、助けるのが遅れたのにも関わらずお礼を言われること。もっとあの時、俺が助けるのが早ければ助けられたかもしれない。そのような後悔が頭の中で回り続ける。


(早くスタンピードを終わらせなくちゃ)


 ランドリアを出ると、そこは重症者たちが寝ていたりしていた。


「ルーナ、ミロ頼む」

「「うん」」


 本当なら最前線に来て援護してほしいところだが、目の前に重傷者たちがこんなにいるならここでルーナたちが助けている方がいいに決まっている。


「俺たちは先に行こう」

「「わかった」」


 ルーナとミロ、ルッツを置いていき、最前線らしきところへ向かう。道中、人とモンスターの死骸が転がっていた。


(もうこんなところまで)


 ランドリアからさほど歩かないところでこの状況なら、ランドリアにモンスターが来るのは......。そう思いながら最前線に着くと、モンスターを斬り殺しているギルドマスターであるガイルさんがいた。そして俺の顔を見るとこちらへ近寄ってきて


「なんでランドリアにいなかったんだ!」

「元凶は止めました。だから俺たちも最前線に加わります」

「だからって、俺は......」


 ガイルさんが言いたいことはわかっている。でも、この現状を見ている以上、時間が進むにつれて、ランドリアにモンスターが押し寄せてくるだろう。


「決めたんです。俺はすべての人を救うと」

「......。わかった、でも俺が危ないと判断したら引いてくれ。頼む」

「わかりました」


 そして俺たちも戦闘に加わろうとした時、森林内部から数十体ものモンスターが近寄ってきたので、俺はグラムに波動拳を付与させて横へ振る。


 すると案の定、あたり一面が真っ二つになり、すべてのモンスターを倒すことが出来た。それを見た、ガイルさんやシャイル、クロエは驚いた表情で俺を見て来た。そして、シャイルが少し震えながら尋ねてくる。


「本当にメイソンなのか?」

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