第15話 魔族領脱出


ルッツ様の声を聞いた瞬間、ルーナは泣きながら抱き着いていた。


「無事でよかった......」

「あ、うん。それよりも実験は?」

「実験ってなに?」


 実験ってなんのことだ? もしかして、この部屋にいる人たちと関係しているのか?


「俺の固有スキル、宝石ダイヤロックを使って不老不死を作ろうとしていたんだ。それ以外にも死体を完ぺきに操れる実験とか」


 それを聞いてつい、質問をしてしまう。


「死体を操るって、死者蘇生と何が違うんですか?」


 すると俺とロンドを見て尋ねてくる。


「えっと、あなたたちは誰ですか?」

「私の騎士、いや仲間のメイソンと勇者ロンドだよ」

「そ、そうなんですね。姉さんが他種族の男性と仲間なんて......」


 そう言いながら驚いた表情をして俺とルーナを交互に見ていた。すると、ルーナはルッツ様の耳元で何かを言った途端、ルッツ様はハッとした表情で俺を見つめた。


「この人が......。それよりも、質問の回答ですね」

「お願いいたします」

「死者蘇生とは、意思を持たないただの傀儡であり、実験をしていた内容は、意思を持ちつつ自由自在に操る研究です」


 俺は黙り込んでしまう。普通に考えて、生きている人やモンスターより死んでいる存在の方が多い。それを駒として使えるとしたら......。魔族の戦力が他種族と大きく差が開いてしまう。


「ですけど、周りを見た限りどちらも研究は成功していなさそうですね」

「た、多分ですけど」


 その時、俺に対してルッツ様が言う。


「メイソンさん、私に対して敬語は良いですよ。姉さんが認めた人に敬語で話されるのは嫌ですから」

「あ~。分かり......、分かった」

「はい。それにしても姉さんにもね~」

「ちょっとルッツ!」


 ルーナは顔を少し赤らめながらルッツの体を軽く揺さぶっていた。


「ごめんごめん。それよりもここにいた魔族はどうなりましたか?」

「魔族はいなかったよ?」 


 ルーナが言う通り、ここにいたのはリーフであり、もともとは人間だ。正真正銘の魔族がここにいたわけではない。


「え? じゃあ......」


 そう言いかけた瞬間、俺たちが入ってきた扉が開いた。そして、徐々にこちらへ近づいてくる足音がする。俺はすぐさま、剣を抜いて戦闘態勢に入る。


(......)


 誰なんだ? でも、今魔族が来られても、先程リーフと戦ってしまったため、体力を消耗がひどくて勝てるビジョンが見えない。


 そこから一分も経たないうちに俺たちの部屋の扉が開く。すると中に入ってきたのは小さな少女であった。


「あれ? 封印が解けてるじゃん!」

「......」


(次元が違う)


少女を目の前に来て感じた。リーフやエルフの国で出会った魔族でもレベルが高かったが、この少女はそんな比では無いと一瞬でわかった。すると、少女が俺たちに殺気を出しながら


「あなたたちが私の城を壊したってことだよね?」

「......」

「まあそれは良いよ。そこの男の子さえおいて行ってくれれば見逃してあげる」

「そんなことできるわけないじゃない!」

「じゃあ死んで?」


 少女は小さな黒い玉を複数出して俺たちに放ってくる。


(あれを食らったら......)


 その時、ロンドが七色に光っている水晶を地面にたたき割る。そして、俺たち四人が光出して、この場から転移させられた。


 目を開けると、そこは魔族領に飛ばされる前の地下室にいた。俺はロンドを見ながら質問をする。


「ロンド、今何をした?」

「転移水晶を使った」

「でも......」


 俺の知っている転移水晶は一個につき一人のはずだ。


「まあそんなことどうでもいいだろ。今はスタンピードのところへ向かおう」

「あぁ」


 その時、ルッツが


「え? スタンピード?」


 驚いた表情で俺たちに尋ねてくる。


「あぁ。今スタンピードが起きているんだ」

「あ......。もしかして」


 するとルッツは下を俯きながら何かを考えているようであった。

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