第5話 遺跡


 遺跡を歩き始めて数分経ったところで、三つの入り口に分かれる場所にたどり着いた。


「どこに入ればいいんだろう?」

「ちょっと待って」


 俺は、索敵スキルを使う。


(右は違うか)


 右方面の入り口は、モンスターたちの気配がしなかったため、多分行き止まりということだろう。そして、左方面には大勢のモンスターが感知される。


(こっちはモンスターハウスか)


 流石にモンスターハウスを突破した後、ミノタウロスを討伐する体力があるのかと聞かれたら微妙なところだ。


(だとしたら、中心の入り口か)


 そう思い、中心の入り口にも索敵を使うと、モンスターの気配があまりせず、道が入り組んでいることに気付く。


「多分真ん中だろうね」

「わかった」


 俺がそう言うと、クロエとルーナは中心の入り口を進んでいったので、俺も続くように歩き始める。そこから十分ほど歩いたところで、一つの部屋に直面する。


「扉開けるよ?」

「あぁ」


 俺たちは武器を取り出して部屋の中へ入ると、ゴブリン数体とホブゴブリンが奥にある扉を守っていた。


「いつも通りやろう」

「「うん」」


 俺はゴブリンとホブゴブリンに対して、略奪を使いスキルを奪う。


・身体強化(小)

・身体強化(中)


 スキルを奪われたゴブリンたちが怯んだ一瞬を逃さず、火玉ファイアーボールを放って二体のゴブリンを倒す。それと同時にクロエがゴブリンに斬りかかり倒した。すると、ゴブリンたちは円状に回りだして、俺とクロエを包囲してくる。


 そして、ゴブリンたちが全方位から俺たちに攻撃を仕掛けて来た時、ルーナが俺とクロエに守護プロテクトを使ってくれて攻撃を防ぐ。


 ゴブリンたちがよろめいた瞬間、魔剣グラムに風魔法を付与させて、振りかざす。すると、風の衝撃波が出てきて、ゴブリンたちを一掃した。


 その時、ホブゴブリンがルーナに向かって攻撃を仕掛けて来ていたので、スキル(高速)を使い、ホブゴブリンの攻撃を受け止める。


 すると、俺たちが入ってきた入り口から足音が聞こえて、この部屋から奥の部屋に走って行った。


「雑魚らしく時間を稼いでくれ」


 ロンドたちは俺たちを嘲笑うように言いながら、奥の部屋に行ってしまった。


(なんであいつらの道しるべにならなくちゃいけないんだよ)


 一瞬そう思った時、ホブゴブリンが俺に向かって攻撃を仕掛けて来た。


「やばい......」


 だが、ルーナはホブゴブリンに対して、守護盾プロテクト・ガードを使い、俺への攻撃を防ぐ。


「ありがとう!!」

「うん」


 一瞬怯んだ瞬間を逃さず、魔剣グラムに風魔法を付与させて、ホブゴブリンの首を斬り落とした。すぐさまクロエの方を向くと、ゴブリンたちを一掃してこちらへ戻ってきていた。


「はぁ、はぁ......」


 俺は膝を落として床に座り込むと、ルーナが


「お疲れ様」

「あぁ。ルーナもありがとな」

「うん!」


 そして、クロエも合流すると


「私もホブゴブリンと戦ってみたかったな」

「ははは。ごめん」

「いいよ。それよりも勇者パーティのことはどうする?」

「......。一旦休憩を取ってから追おうか」

「「了解」」



 ロンドたちが先に進んでしまった以上、俺たちも早めに追った方がいい。だが、休憩も取らずに追ってしまうと、道中で戦闘になった時、勝てる戦いも勝てなくなる。


 そうなってしまえば俺の目的の意味がなくなってしまう。そう、結局はロンドたちを守るためにここにいるわけじゃない。俺がここにいるのは、ルーナやクロエ、そしてルッツ様たちを守るために居るだけであって、ここで死ぬわけにはいかない。



 三十分程休憩を入れてから、遺跡を進み始めた。道中、ゴブリンたちと何度か接敵したが、クロエが難なく倒してしまい、スムーズに進んでいくことが出来た。するとルーナが扉を指さした。


「あれ!」

「あ......」


 今までとは違い、真っ黒の扉が目の前にあった。


(ここがボス部屋なのか?)


 俺は二人の顔を見て、中へ入ろうとした時、ロンドたちの悲鳴が聞こえた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


(!?)


 中へすぐさま入ると、床に膝を崩しているロンドが、ミノタウロスに殺されそうになっているところであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る