第16話 魔族との戦闘2


 魔族が言ったことが理解できず、つい質問をしてしまった。


「それはどういう意味だ?」

「それはこっちに来ればわかるよ」

「.......。そんな誘いにのるとでも?」


 すると、魔族は頭を掻きながら


「それは困るな。このことを知っちゃった以上、君はこっちに来てもらわなくちゃ困るんだけどな......。まあいいや。だったら君を殺せばいいことだし」


 魔族はそう言って、俺の方へ向かってきて攻撃を仕掛けて来たので、魔剣グラムに火と風の魔力を込めた状態にして受け止める。すると、魔族が一瞬怯んだ。その瞬間クロエは逃さず、斬りかかった。


 だが、魔族はクロエの攻撃を難なく避けてしまい、距離を取ってくる。


「めんどくさいな。もういいや」


 魔族は魔法を唱え始めて、頭上に大きな黒い玉が出てくる。そしてそれを、俺たちに放とうとして来ていた。


(やばい......)


 本能が言っている。この魔法を食らってしまったら、確実に俺たちは死ぬ。


 だが、悩んでいる余裕も無く、黒い玉がこちらへ寄ってくる。俺は反射的に魔剣グラムへ炎星アトミック・フレア風切エア・カッターを複合させた。そして、俺は黒い玉の方向へ向かいながら、斬りかかった。


「「メイソン!!」」


 すると、魔剣グラムから百熱の竜巻が出てきて黒い玉を相殺する。それを見た魔族は、驚きを隠しきれないようであった。


(今だ)


 ここを逃しちゃいけないと思い、俺はスキル(高速)を使い、魔族の後ろへ立った。


(!?)


 瞬時に魔族が俺に攻撃を仕掛けようとした時、もう一度百熱の竜巻を放つ。すると、魔族は百熱の竜巻をもろに食らい、体全体が燃え盛っていった。そして、煙があたり一面に舞いおちる。


 俺は、煙に剣を向けながら無くなるのを待つ。そして一分ほど経ったところで、煙が徐々に薄くなっていくと、その中から魔族がこちらへ歩いてきていた。


(え?)


 魔族が生きていることに驚く。


(今の攻撃でも魔族は死んではいなかよ......)


 だが、魔族の体全身が火傷を負っている状況であった。そこで、心底魔族が危ない存在だと再認識する。普通、あの状況になったら他の種族なら死ぬはずだ。それなのにあいつは生きている......。すると、魔族は苦しそうにしながらしゃべりだした。


「これが選ばれし者の力か......」

「......」


 ここでこいつを生かしておいてはならないと思い、俺は魔族が重傷を負っている状態を逃さず、略奪を使用した。だが、先程と同じ結果で、スキルを略奪することが出来なかった。


(なんで......)


 魔族は、最後の力を振り絞りながら魔法を使いつつ言った。


「......。今のままなら分が悪い。一旦撤退させてもらうか」

「逃がすか!」


 魔族に近づいて斬りかかろうとした時、魔族は黒い渦の中へ入って行ってしまった。そして、その中で話しかけられる。


「次は仲間として会いましょう」


 そう言って、黒い渦と一緒に魔族が消え去った。


 すると一気に魔力が無くなり、膝を落す。そこから一分程経ったところで、ルーナとクロエがこちらへやってきて、心配そうな表情でこちらを見てきた。


「メイソン、大丈夫?」

「うん」


 ルーナはそう問いかけながら、魔力を振り絞りながら俺に回復魔法をかけてくれる。そして、クロエが言った。 


「逃げたってこと?」

「あ、あぁ」

「そっか」


 すると二人は、安心した表情で座りこみながら俺の事を見つつ


「今、何をしたの?」

「わからない。でも今の戦いで魔剣に俺の魔力を込められることが分かったから、その力だと思う」

「そ、そっか」


 そして、ルーナとクロエに肩を持たれながら森を抜けようとした時、一瞬聞いたことのある声がした。だけどこんな場所で聞こえるはずがないと思い、王宮へ戻った。


(あの声は何だったんだ? 勘違いならいいけど......)


 それに、俺のスキルが魔族と共存できるってどう言うことなんだよ......。

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