星に憧れた少年

琴葉 刹那

プロローグ 星に憧れた少年

 二回だけ疾る星をこの目で見たことがある。

 奇しくも二回とも同じ場所、同じ時間だった。

 あの日、僕は親の言いつけを破って森に入り、山頂の方に向かったのだ。

 奇跡的に山頂についた僕は「ここでも星に届かないか。」と落胆していた。


——その時だ。


 空を疾る星が現れたのだ。

 壮大な光を放ち、天を駆ける星が。

 

 幼い僕には、それが流星か彗星かわからなかった。

 ただ——ただ見惚れていた。

 星が過ぎ去り、一抹の光さえも消えるまで心ここに在らずといった様子で、ずっと空を眺めていた。

 気がつき、帰ろうとした時、木々が動いた。

 星灯だけで、暗くて何も見えない恐怖の中、僕は動くことができなかった。

 大木と大木の隙間から現れた存在、それはオーガだった。

 三メートルはあるであろう木より一回りほど小さく、その太い手には——大剣が握られてあった。

 若干十歳が背負うにはあまりに大きく、強大な殺気。

 僕の体は金縛りにあい、身動き一つ取れなかった。


「ニン・・・ゲン・・。」


 オーガが喋る。


「ヒサシ・・・ブリノ・・・ゴチソウ。」


 ゆっくり、ゆっくりと近づいてくる。


「あっ、ああ。」


 僕の顔が恐怖に歪む。涙が頬を、手を、足を伝い零れ落ちていく。

 オーガが大剣を振り下ろそうとし、


(もうだめだ。)


 そう思った時だ。


キン!


 変な音が聞こえた。まるで金属と金属がぶつかり合ったような甲高い音が。

 恐る恐ると目を開ける。するとそこには衝撃の光景が待っていた。


 ——オーガと鍔迫り合いを繰り広げる一人の剣士——


 あの巨躯、あの大剣に男性にしては小柄な体と細い長剣で渡り合っている。


「待たせたな。——あとは任せろ。」


 そう言うとオーガの剣を押し飛ばす。


「『流星群』!」


 さまざまな色を纏った凄まじい速度の連続突きがオーガを襲う。その度にオーガはのけぞり、足に、腹に、胸に穴を穿っていく。


「最後はド派手に行こうか。」

 

 剣が蒼い光を纏う。それを担ぐと勢いよく飛び出し


「『彗星』!」


 上段斬りを放ち、オーガを肩から袈裟斬りに分断するのだった。

 


————————————————————

あとがき

 初めましての方ははじめまして。そうじゃない方はお久しぶり。琴葉刹那です。

 今回は『彗星と流星の交わり』を書き直して思ったこと。『あれ?これ主人公一人にして異世界ファンタジーにした方が面白くない?』という思いつきの元に書いた作品であります。(余談ですがこのままだと何も考えずに書き続けたせいで『彗星と流星の交わり』は黒歴史ということでお蔵入りになります。フォロワーいる方が気持ち書きやすいんや。)

 なので結構今回のプロローグは似ているはずです。まぁ、現代ドラマと異世界ファンタジーなので何もしなくても大部分変わるんですけど。ちなみに主人公は前の天才タイプ二人ではなく凡人タイプ一人となります。星に憧れるところは前と同じです。それではまた次回。ばいばーい。



 

 






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