異世界で教師になった俺、生徒の相談に乗っていたら英雄になる
@siimorisiki123
1 運命の出会い
「はい、この問題解ける人ー。じゃあ、君!」
「チッ」
え、舌打ち!?
なんで!?
怖いんだけど!
なんで教師なのに生徒に舌打ちされてんの俺!
てかなんでせっかく異世界に来たのに教師やってんの俺!
あぁもう意味わかんねぇよ!
まったく、どうしてこんなことになってしまったんだか……
遡ること二週間。
話は俺の一度目の人生が終了するところから始まる……
ある日大学からの帰宅途中、俺は突然死んだ。本当に突然だった。
即死だったらしく、記憶がほとんど残っていないが交通事故だったはずだ。
やがて俺は、ポツンと小柄な女性が座っている、一面真っ白な空間で目を覚ました。
「我は女神。お主を新しい世界に旅立たせてやろう」
「……は???」
「まぁこのまま放り込んでも、すぐに死ぬだろうからな。能力を授けてやろう」
「いや、ちょっと……」
「『武器創造』でいいか? あと『完全翻訳』もつけておこう」
「その前に聞きたいことが色々と……」
「じゃあお主の二度目の人生に幸多からんことを」
「ちょっと待ってぇ……」
そうして自称女神によって、俺は異世界へと旅立つことになったのだ。
詳細はよくわからない。
強制的に話を進められたのと、半ば夢の中のような状態だったので記憶が確かではないのである。
現に自称女神の顔も思い出せない。
一つ思い出せるのは、能力を授けると言って『武器創造』と『完全翻訳』の能力を貰ったことだけだ。
能力は選べるもんなんかと思ったが、勝手に決められた。神の事情は面倒そうだな。
が、まぁいい。ここまで来てしまったらなにを言っても変わらない。
幸い、ポジティブシンキングには自信がある。
だったらせっかくの異世界ライフ。楽しんでやろうじゃないか。
「うわぁ、すげぇ……」
この世界に降り立って、第一声は自然と口から溢れた。
どこかの裏路地で目を覚ましたようだ。一歩外へ踏み出すとそこはもう別世界だった。まぁ実際に異世界なわけだけど……
そこら中を馬車が走っているし、空には飛龍が飛んでいる。道ゆく人の中には武器を携えている人もいて、改めてここは異世界なんだと実感を沸かせる。
なんだかテンションが上がってきたぁ!
「チッ、邪魔くせぇな」
「あ、すいません……」
冒険者的な職業が存在しているようだな。大剣を背に担いだ人にぶつかられてしまった。
柄悪いなぁ……
まぁ、道端で棒立ちしていた俺も悪いんだろうけどさ。
さぁ、気を取り直して! せっかくだし異世界らしい事したいよな。
やっぱり冒険者か? 冒険者ギルドとかはあるのだろうか。
適当にぷらぷら歩いていると、それらしき建物に辿り着いた。
「……いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ」
「えっと、冒険者になりたいんですけど……」
「そうですか。ではこちらの紙をご記入ください」
受付嬢が一枚の紙とペンを差し出す。
にしてもなんだ? 周りから避けられているというか、嫌な目で見られている気がする。
取り敢えず適当に記入して受付に持っていった。
「……承りました」
そうして軽く説明を受けた後、早速依頼を受けてみることにした。
パーティ依頼の掲示板はこっちだったかな。
最初だし、初心者歓迎のところ辺りにでも……
ここなんていいんじゃないか?
〜初心者歓迎・冒険者の基本教えます!・誰でもどうぞ! 〜
だってさ。
「すいません。パーティには入りたいのですが……」
「は? お前なんて入れるわけねぇだろ! 出てけこの異端者が!」
………え?
なんでこんな反応されなきゃいけないの?
誰でもどうぞ! とか書いていた癖に!
こんなパーティこっちから願い下げだわ!
はぁ、仕方ないな。ここにするか。
〜人員不足・老若男女誰でも募集〜
「すいません。パーティに入れて欲しいのですが……」
「ふざけるな! お前なんか入れるものか!」
なんだよ!
老若男女誰でもいいって書いとったやろがい!
俺は若い男だぞ!
もうどこでもいい! 誰でも入れるとこ!
〜加入条件人間・その他条件なし〜
「すいません。パーティに入れて頂きたいのですが……」
「あぁ? お前みたいな奴が俺のパーティに入れるとでも思ってるのか? 痛い目見たくなけりゃ、さっさと消えな!」
もう意味わかんねぇよ!
人間なら誰でもいいんだろ!? 俺は人間ですらないってか?
というか、俺ここの奴らに嫌われすぎでしょ!
俺なんか悪い事したか!? 俺この世界に降り立ってから一時間ぐらいしか経ってないんだけど!
もういい!
そういやパーティの人数は自由って聞いたな。こうなったら一人でやってやる!
任務依頼の掲示板はこっちか。
どれどれ。簡単そうだし、この最低ランクのゴブリン討伐でもするか。
『武器創造』もあるんだし、なんとかなるだろう。
結果、とんだヌルゲーだった。
てか『武器創造』が強すぎる。
頭の中で念じた武器が出現するんだけど、これがとてつもなく強力。
創造した武器を持っているときは、全ての身体能力が格段に上昇するし、武器の性能もいいわで弱点が見つからない。
最初は勝手な能力を与えられたことに内心ガッカリしていたが、想像以上にチート能力なのかもしれない。
さてと、依頼達成したし換金でもするか。
「すいません。この依頼達成したんですけど、換金してもらえますか?」
「かしこまりました。達成証明を見せて頂きます」
俺はポケットから青い宝石のような物を取り出す。
これはゴブリンを討伐した際に、ゴブリンの亡骸から出てきたものだ。
「確認いたしました。ではこちらが討伐報酬になります」
少なっ!
俺に差し出されたのはたったの銅貨二枚。
屋台の串焼きですら銅貨三枚だったぞ。
はぁ、自分の力量もわかったことだし、もう少し難易度の高い依頼を達成するしかないのかな。
「このオーク討伐の依頼を受けます!」
「そちらは危険な依頼の為、二人以上での挑戦が条件となっております」
「じゃあ一人で受けられる依頼はどれですか?」
「ゴブリン討伐のみになっております」
は? ちまちまゴブリン倒して生きてけってか?
あぁ、もう冒険者にはうんざりだ!
どうやって生活しよう、日本食でも広めて金稼ぐかな。
取り敢えず外へ出て街をふらつくことにするか。
今夜何処で寝るかが目先の問題だな。もちろん銅貨二枚じゃ宿になど泊まれない。
こりゃ野宿せざるを得ないか。
「きゃあ! やめろなさい不届き者! 私に触れればその命は無いものと思いなさい!」
どこからか響く女性の悲鳴。誰かに絡まれているようだな。
こりゃ助けに行くしかない! と俺の中の正義が叫んだ。
これが俺の異世界ライフにおける、運命の出会いになるなど思ってもいなかった。
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