村編

第7話

 ざっと見たところ槍の数は30本以上。

 つまり敵の数は30人以上。

 

 こっちは森で拾った棒2本。 

 つまり2人。

 

 ふっ、2対30か、良いぜ相手してやんよ。


「てな訳で見事俺たちは敵の内部に侵入できたわけだ」

「牢屋にな。敵じゃなくてただの村人だし、侵入じゃなくて捕まっただけだ」

 

 そう、光弥の訂正の通り俺たちは捕まって牢屋に入れられている。

 村人たちに囲まれた俺たちはすぐさま棒を投げ捨てて両手を挙げて膝をついた。

 

 幸い言葉も通じて一応敵意がないことは伝わったようだが、森で怪しい動きをしていたし服装も変だしなんか訳わからんからとりあえず牢屋にぶち込んでおこうという結論に至ったらしい。

 

 どうやら割と早い段階で俺たちのことに気づいて監視していたようだが、下手に干渉しないで成り行きを見守られていたとのことだ。 

 親切な牢屋番が教えてくれたところによると、いつもなら重要な判断を下している村長とその家族が大事な用で村を留守にしているらしく、迂闊なことはできないんだとか。

 

 もし普通に招き入れて村にいる自分たちの家族の命を危険にさらすようなことになったら困るし、村長も明日には帰ってくるのでそれまでは牢屋に入ってて欲しいとのことだった。


 武器が木の棒だったとはいえ不審人物には変わりない。

 俺たちは不安でいっぱいな村人たちからの精一杯のおもてなしに甘えさせていただくことにした。


 寝床はまあ、藁だけど固い地面よりはましだし、何より次の日の朝までぐっすり寝れることが嬉しかった。





 ………夢を見た。

 3日前まで自分がいた日常の景色。

 ………予感がした。

 もう戻れないだろうと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る