第11話 冒険者ギルドのお約束
昼食を済ませて冒険者ギルドに到着、ヤハザンさんは食事休憩なのか不在だ。
仕方がない婆さ・・・怖っ、睨まれたよ心を読まれたかな。
ば・・・お姉様に買い取りをお願いするかと思ったら、後ろが騒がしいんだが有名人でも来たのかな。
「どけよ、餓鬼!」
声と共に肩を掴まれて横に飛ばされた。
「おい婆さん査定を頼まぁ。今日の獲物は熊だぜ、熊、ギャーハハハ」
ガハガハ煩く笑い、俺を横目で見て鼻で笑いやがった。
ラノベお約束の冒険者ギルドでの揉め事だ、しかも俺を狙ってだよ。
嬉しくて、思わずニヤニヤ笑いが出ちゃったよ。
「あーんお前、俺の顔を見て何をニヤついているんだ」
「あー、つい可笑しくってさ。ゴメンね」
棒読みで返しちゃったよ。
でかくてゴツい髭もじゃで臭い汚い声がデカいって、ザ・悪役キャラ感満載だもん。
後ろからもどら声がする。
「イキった餓鬼じゃねえか。おいガド、お前思いっ切り舐められてるぞ」
振り返るとよく似た面構えのでかくてゴツい髭・・・以下略。
隣には一回り小さく、コピーの様な顔と目付きの悪い奴も居る。
ガドと呼ばれた男が、後ろから俺の襟首を掴もうと手を伸ばしてきたので、横に移動してかわす。
「ほぅ、洒落た事をするな」
ガドを煽った男が呟くが、声が笑っている。
闘神グラン様から加護として見切り捌くと、投げ飛ばしと押さえ込む能力を貰ったが、周囲の動きが判って避け易いわ。
又伸びてきた手を払い、手首を掴んで捻り足を払う。
あーあ、顔面から床にダイブしたので痛そう。
目付きの悪い奴が横から蹴り込んで来るが、爪先で跳ね上げて軸足を払う。
そいつは後頭部から落ちて呻いているが、自業自得だ、糞が!
オイオイ、二人とも殺気がダダ洩れで怖いんだが、ガドを揶揄った奴が抑えている。
ニヤニヤしながら俺を見ているが、目が全く笑っていない。
「お前・・・面白いわ、俺達に喧嘩を売るとはいい度胸だな」
「あれっ、喧嘩を吹っ掛けて来たのはお前等じゃん。痴呆症か健忘症かな」
煽りに弱い低脳は簡単に引っ掛かり、腰のロングソードに手を掛けたよ。
カウンターの方から鋭い殺気が飛び、一瞬で動きを止める三人衆見事な連携です。
〈プッ〉と思わず吹きだしちゃったよ。
「何をしているのかな、ガダ,ガド,ガル」
「何って、この餓鬼が俺達に因縁を付けて来たので・・・」
「ほぅ、一部始終を見ていた、ギルド職員の話しと全然違うんだがな。お前達の頭の中ではそうなっているのか。お前名前は?」
「ユーヤ」
「まぁ揉め始めたのなら、理由の如何んに関わらず収まら無いだろう。最後までやるか」
薄っすらと笑いながら、俺を見ている。
「元々興味の無い奴等ですから、どうでも良いです」
三人衆の唸り声が聞こえるがハモっているよ、仲良いなぁー。
「お前等は収まりそうにないか、ユーヤすまんが相手をしてやってくれ。裏に訓練場があるので頼むよ。双方判っていると思うが、殺すなよ。良いな」
取り仕切っている男がウインクするのは、面白がっていやがる証拠だ。
ギルド内に居た冒険者達が〈模擬戦だ久し振りの模擬戦だぜ賭ける奴は集まれー!〉何て銅鑼声を張り上げる。
お祭り騒ぎになり、入口からドヤドヤと通行人と見られる人達までが、模擬戦だってと目を輝かせている。
何か町に向かって模擬戦のお知らせをしているし、完全にイベント扱いだよ。
訓練場に行くと、続々と集まる近隣住民らしき人達と冒険者達が俺の値踏みをしている。
ガダ、ガド、ガルとの戦力差を検討しているって事は、三人衆の実力は周知の事らしい。
「ユーヤ、誰からやる?」
「あー面倒なので、三人纏めてでいいですか? ところで、俺の事を知っている様ですが」
「ギルマスをしているドルーザだ、ヤハザンから聞いているよ。今日も沢山有るのか」
「10体か20体位引き取って欲しいのですが」
「おぉ、終ったら案内するぞ。殺さない程度に思いっ切り痛めつけてくれ」
「使い物にならなくなりますよ」
「気にするな。お高いポーションを売り付けて、借金で締め上げてやるよ」
ウインクしながら笑うギルマス、性格悪いねー。
三対一と知って鼻息を荒げる三人衆と、賭けが成立しないと歎く冒険者や一部市民と、何処にでもいる大穴狙いが俺に声援を送くってくる。
ロングソード一人に、ロングソードの長さも幅も1.5倍の大剣使いと、ショートソード二本持ちとバラエティーな事。
俺は剣等振り回したことがないので、素手で相手をする事にした。
武闘神グラン様の加護が有るので何とかなるだろう。
ギルマスの開始合図と共に、大剣使いのガドが真っ向から袈裟切りに振り下ろして来る。
熱いねー、半身にずらして躱す。
ロングソードのガダが横薙ぎに切りつけてるのを刀身を蹴り上げ、腕が上がったところを狙って肋骨に蹴りを一発。
すかさずガルが懐に潜り込んで来るが臥せて足払い、バランスを崩したので顔にヤクザキックをお見舞いする。
三人衆の顔色が変わりギャラリーが沸き立つ。
振り下ろした木剣を持ち上げるガドの腹を、跳び込みざまに深々と蹴りつける。
くの字に体が折れたところで、横に周り膝の皿を横から蹴って壊す。
ガルが体制を立て直して切り込んできたが、右手の一撃をかわして手首を掴み捻り揚げて頭から地面に叩きつける。
首が嫌な角度に曲がっているが、未だ死なないだろう、と思う。
脇腹に蹴りを受けたガダが息を整えて慎重にロングソードを構えて居る。
ジリジリと回り込んで来るが切り込んで来ない、切っ先が届く寸前後ろからガドの唸り声と共に足を狙った大剣が横切る。
大きく後方へジャンプでかわしガドの右肩を蹴りつけて着地。
ガドの大剣が横切るので切り込めなかったガダが遅れて切り込んで来るが、助骨が折れているので動きに切れが無い。
易々とかわして腹に渾身の蹴りを入れると、血反吐を吐きながらうずくまるガダ。
ドルーザの制止の声で勝負有り。
大穴を当てた奴の歓喜の声を背に、買い取りカウンターに戻る。
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