第3話 反重力で何ができるのか

反重力が実現すると、世の中にどう貢献するのでしょうか。


ここでは、反重力の性質から想定される製品、技術等を推察していきます。


まずは、0G近辺の無重力環境をつくれます。


すぐに思いつくのは、おそらく、タイヤのないクルマ=空飛ぶ自動車でしょう。


反重力で推進するためには、0Gを使います。


たとえば、振動モータを思い浮かべてください。モータに重りが偏心して取り付けてあります。


そのまま回転させると、全方位へ遠心力が働くので、その場で振動するだけですが、たとえば重りがある一定の片側に来たときに0Gにすると、遠心力がゼロになります。質量は存在していますが、0G環境下では重さは0になるからです。


こうして、0Gにしていない側だけ遠心力が働くため、そちら方向へ選択的移動することになります。


円形のサイクロトロン内で陽子を亜光速まで加速、振動モータと同じように半円側で0Gにすれば、そちら側では加速が働きません。


次は、卓上の無重力環境実験装置です。国際宇宙ステーションでしか実験できない無重力実験を、気軽に卓上でできれば、新素材の発見・開発が相次ぐことになるのではないでしょうか。


この実験装置を大規模にしたものが、無重力環境生産装置です。新素材を量産できれば、世の中ももっと便利になるでしょう。


つぎは、数G~数十Gぐらいの弱い反重力です。反重力には、原子や分子間を離れようという力が働きます。


すると、通常の固体では、原子や分子が密に詰まっているために、向こうの光が通過しませんが、反重量下に置かれた固体は、原子や分子間に隙間ができます。


その隙間を向こう側の光が通過すると、モノが透けて見える状態になります。透明なガラスをはめ込まなくても、特定エリアを反重力下にすると、窓ガラスのように外の景色が透けて見えるということも可能でしょう。


また、人体に適用できれば、皮膚を切開しなくても、皮膚や筋肉を透かして、体の内部を視認することができるのではないかと考えます。


人体は複雑な多様な物質で構成されますので、変調をかけた反重力によって、組織が壊れる前に反重力を止めるような工夫は必要でしょう。


さらに強力な反重力になると、原子間や分子間力がより弱くなっていきます。丁度、加熱したイメージです。加熱すると、一般的に固体→液体→気体と相変異しますが、反重力でも同じように固体から液体、気体へと相変異を引き起こします。



加熱と違うのは、加熱すると燃えてしまうようなもの=たとえば、木材=でも適用ができるということです。木材を液状化することで、あたかもプラスチックのよううなイメージで木材製品を成形できる日がくるかもしれません。


トンネルを掘るシールドマシンのドリル部分を反重力にすると、岩盤を液状化することができるので、振動も少なく、瓦礫の運び出しも効率的になりそうです。


ここまで考えたら、すごいモノを思いついてしまいました!


それは、みんな大好き「防御シールド」です。


たとえば、戦車の装甲から数十センチ外側に強力な反重力を展開します。この反重力エリアに侵入した、たとえば、砲弾などは、反重力の分解作用によりもろくなり、粉砕されます。


そして、装甲表面は0G状態にしておきます。0G環境で装甲に衝突した物質は、完全弾性衝突のため、運動エネルギーを破壊エネルギーとして消費せずに反射してしまいます。


こうして、二段式反重力を周囲に展開することで、運動エネルギーに対する防護手段として成り立ちます。


これは、宇宙船には必須の技術でしょう。宇宙デブリから宇宙船を守るのは、特に宇宙船の速度が高速になればなるほど、相対的に運動エネルギーも増大していきますので、身を守る手段を持たないと、とても宇宙進出はできません。


また、乗員がいる区画は、宇宙船を加速するときに0Gエリアにすることで、乗員は加速度を感じなくなるため、今の宇宙飛行士のように過重力訓練をしなくても大丈夫でしょう。


さらに、宇宙船のエンジン以外を0Gにできれば、宇宙船が軽くなるわけですから、小さな水力でも大きな初速で加速することが可能になります。


一旦、巡航速度に達してしまえば、0Gを解除しても、そのまま飛び続けることができます。


さらに強力な反重力にすると、どうなるでしょう?



今までは原子や分子間力を緩める程度でしたが、もっと強力にすれば、原子核まで影響を与えることができるのではないか。ということは、放射性物質に超強力な反重力を当てれば、原子核が揺さぶられることで、放射線の放出が早まるのではないかと。


つまり、みんな大好き「コスモクリーナーD」が作れます!


放射能除去装置(半減期加速装置)ができれば、原発事故など起きたとしても、根本的解決策となるので、ぜひ、作りたいですね。


強力な反重力を瞬間的に展開すると...反重力爆弾が作れます。


効果範囲内を原子分解してしまうため、反重力爆弾の爆発では、そこが球形に抉れてしまう感じになるのでしょうか。ターミネーターでシュワちゃんが未来から登場したときが、ちょうどそのような感じでしたね。


そんな物騒なものを考えるな、作るなと言う方もいらっしゃるとは思いますが、たとえば、地球に落下しようと迫る小惑星があったとして、この反重力爆弾を当てれば、質量欠損を起こし、軽くなるため、軌道が外側へずれることになり、地球への衝突コースを外すことが可能でしょう。


また、月で地面下で爆発させると、地中に球形の空間を作り出すことができ、そこに地下都市を作ることも容易になるのではないでしょうか。


強力な反重力を作る反面では、強力な重力が発生します。


すると、状況によっては、マイクロブラックホールが生成されるかもしれません。


荷電したマイクロブラックホール プラスのものとマイナスのものを揃えれば、荷電しているため磁気閉じ込めが可能でしょうし、ホーキング輻射によれば、プラスのマイクロブラックホールからは、プラスの素粒子=陽子、陽電子が、マイナスのブラックホールからは、マイナスの素粒子=電子、反陽子が飛び出してくるはずなので、それらをとらえることができれば、反物質を貯蔵することができると考えます。


ホーキング輻射により、徐々に荷電が中性化してしまうので、ある程度電荷が減少したら、外部から強力な荷電ビームを打ち込んで、充電する必要がありますが。


そういう意味では、まったくの無から反物質が生成できるわけではないので、物質-反物質転換炉と言う方が合っていると思います。





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