恋愛ができない青年

輝琳

第1話 ぼっちが1人でいては駄目ですか

「ふう、そろそろ家を出るか」

そう呟いた彼、蓮場諒はすばりょうは玄関のドアを開け外に出た。


「やっぱり季節は春だなぁ、気候は安定してるし尚且つ春風が心地いい」


学校まで歩いて通っている彼は近所の公園に植えられている桜の木を眺めて呟いた。


「名残惜しいがそろそろ学校という監獄に向かわないとな」


そう言って彼は再び歩き始めた。


彼の通っている柴咲高校は市内の中でもそこそこの偏差値の公立高校で迷ったら柴咲高校と言われるほど中くらいの位置に属している。

校風からしてもそれほど部活を強要されることは無く

入る必要がある人は就職組か、国立大や私立の大学に行く人がアピールポイントを必要として入部したりするのが常である。


学校の校門に近づくにつれて週始めの挨拶運動が行われていた。


「おはよう、蓮場。朝からそんな暗い顔してちゃあ1週間持たないぞー」


そう挨拶してくれたのがこの学校の社会科担当の1人白井綾乃しらいあやの先生である。彼女はこの学校に来て4年目の先生で黒く艶のあるストレートの髪は腰に届かないくらいまで伸びており身長は女性の平均身長よりも高く容姿端麗で生徒にも人気がある先生

である。

残念な事と言ったら28歳で独身者であり、友人たちが次々と結婚していくのが悩みらしい。


「おはようございます白井先生。今日も朝から早くお勤めご苦労様です」


「全くだよ本当に。朝から早く起きて時間外労働させられているよ。それよりお前は新しいクラスに慣れたか」


「ええ、まあ慣れたと言えば慣れましたが」


「お前はずっと1人で本読んでるよな。周りと関わる事が嫌なのか、それを私は1年の時から気にしているんだよ」


「いや、別に周りと関わる意味が無いから距離を置いているのであって1人なのは気にしてはいませんが」


「お前のそう言うところが...まあいい早く教室に行きなさい、無駄話させて悪かったな」


「いえ、朝からいい気分転換になりました。それじゃあ」


そう言って彼は生徒玄関に向かった。


この高校は1年生が1階、2年が2階、3年が3階と進級する度に上がるシステムになっている。


「全く、何故進級する度に階段を上がる羽目になるのか理解が出来ない」


そう呟きながら彼は階段を上がって2階の自分の教室に向かった。


彼の席は教卓から見て窓側の後ろから2番目の席になっており教室に入ったら即座に自分の席に座り、彼はお気に入りのラノベを読み始めた。


時間が経つにつれて人が増えてきて、うるさくなってきたと思えばイヤホンを着けて本を読み出した。


HRが始まる5分前まで読んでいた彼はイヤホンを外し担任が来るのを待った。


しかし時間がきても来ないため皆が騒がしくなっきたところに彼女はやってきた。


「いやーすまない、挨拶運動の後のあのおじいちゃん先生の話が長くてねー」


あのおじいちゃんとは現代文と古文の両方を任されている国枝伸一くにえだしんいち先生の事で授業の6~7割くらいが彼の話で終わるくらい話のネタが尽きない先生である。


「白井先生、早く今日の日程を教えてください。次の授業の準備もあるんですよ」


「まあまあ、最初の授業は私の担当なんだからいいじゃないか。世間話くらい」


「だとしてもHRに遅れるのは流石に駄目です」


遅れてきた白井先生に噛みついているのはこのクラスの学級委員長の四宮由美しのみやゆみで責任感が強く、おまけに我が強く物怖じしない性格で生徒会の副会長を任されている。


そのやり取りが時間の無駄じゃないのかと思いながら彼は外の青空を眠たげながら眺めていた。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る