3話目 もう1人の殺人鬼と目覚める女子高生
「おい、ここで寝るぞ。」
「うん。」
2時間ほど歩き続けてようやく新しい寝床を見つけた。
もう結は落ち着いていた。いや、落ち着いていたんだろうけどきっかけがあればまた壊れるだろう。
だから、
「なぁ、お前は自分が何したかわかってるか?」
「え、あ…あ…ああああああああああああああ!」
壊れたな。あれ?なんでだろう。戻すためにしてんだろ?なんでまた壊したんだよ。わかんねぇ。なんだこの気持ち。
「結、落ち着け!大丈夫だ。」
「ああああああああ………だ、大丈夫な、なの?」
よかった。完全にあっちに行ってなかった。俺は何してんだろうな。
「ねぇ、カイ。私は……」
「なんだ。」
何が言いたいんだ?それを言ったら結は壊れるだろ。自分でもわかってるから止めた。俺にはそこまでわかってるんだけどな。
「私は…私は…」
「なんだよ。」
あれ、なんでこんな辛く当たってるんだ?優しくしなきゃってわかってるのに。あれ?優しくって何だ?どうすればいいんだ?
「私は…あれは"ワタシ"が殺したの?」
「そうだ。お前だ。」
なんで傷つけるんだろう。ダメだろ。わかってるのにやめられない。これが俺なんだよな。わかってたよ。
「そっかぁ。"ワタシ"が殺したんだァ。」
あれ、堕ちていかない。なんでだ?もしかしてもう?いや、早過ぎないか?もう気づいたのか?
「なぁ、お前名前なんて言う?」
「私は結だよ?」
「じゃあ結の家族を殺したのは"誰"?」
「それは"ユイちゃん"でしょ?」
「あぁ、そうだ、よくわかってるじゃん。」
あぁ、こいつはもう気づいたんだ。自分の中にもう1人作ればいいって。俺は気づくのに時間かかったんだけどな。
俺はカイ。殺す時はな。いつもは廻。そう。もう1つの人格を作って、責任を全部そいつに任せてしまえばいいんだ。
二重人格になるのは意外と簡単だぜ。まぁ、二重人格もどきだけどな。ものすごいストレスを抱え込んで、自分の中でそのストレスの元を作った自分を、分離させる。それで自分にずっと言い聞かせるだけ。
な、簡単だろ。結は気づくのが早かったな。
まぁ、これで、俺は楽だけどな。
「結。お前は俺についてきて良かったって思ってるのか?」
「うん、思ってるよ!」
なんでだ。見知らぬ9つのガキについて来て何がいいと言うんだろう。
「ねぇ、カイくん。本当は何歳?」
「だからカイは、9だって言ってんだろ。」
「違うよ。もう一人の"かい"君に言ってるの。」
こいつ。ここまで勘が良いのかよ。すごいな。
「はぁ、言ってなかったな、俺は廻。輪廻の、廻るだ。そっちは21だ。"カイ"は、精神年齢が9で止まってるからな。でも、言葉だけは廻の方からとるから、少し違和感あったろ。ごめんな。」
「やっぱり。9歳にしては体付きがガッチリしてるし大人っぽいなって思ってたの。それでさ、9歳の方はカイ君って呼ぶけど廻の時は廻って呼び捨てしていい?」
「あぁ、区別はつけれる方がいいからな。いいぞ。」
こうして結は廻の秘密を知った。いや、正しくは正気を保つ方法を知った。
しかし、勿論廻も結も、殺しを行う時はやっぱり壊れてしまう。それについてはまだ結は知らなかった。
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