猜疑心の塊の俺が、異世界転生して無双するとかマジあり得ない
エルマー・ボストン
異世界なんて俺は知らない
唐突すぎない?
突然で悪いんだけど、俺は稲葉 裕仁。
高校生2年生。
で、なんか分からないけど、どうやら俺は死んだらしい。
自分でも突然すぎて、マジで混乱していた。だから、そのあたり一面真っ白い空間が一体何なのか、全く分からずにいたんだ。
「はぁい、おめでとうございまぁ~す。本日の異世界転生、当選のお知らせでぇ~す。」
パニック状態の俺の目の前に、突如としてかなり薄着のお姉さんが、拍手をしながら現れた。
金髪の美人だ。
だが、あんな格好で男の前ににこやかに現れられる、その神経を疑う。
「え、っと。はい、どうも。…え?何?何なんですかコレ。」
俺は呆然と応えるに留まった。
「あら、今時にしては察しの悪い青少年ですねぇ。異世界転生ですよ、異世界転生。よかったですねぇ。」
死んだ、という実感がある者に対して、突然よかったですねとは如何なものか。
それにしても、死んだ経緯が思い出せない。確か、学校からの帰宅途中だったはずだけど。
「いや、俺、異世界転生?あんまり詳しく知らないんで…。いきなり言われても実感がわかないっていうか。…え?俺、死んだんですよね?」
ジト目で、怪しいお姉さんを半ば睨む。
それでも彼女は、依然笑顔を絶やしていない。
「まぁ。そんな若者、まだいるんですねねぇ。仕方がありません、簡単に説明しましょう。
あなたは今回、『神々の代行者』に選ばれたのです。
それで、数多ある異世界の中の一つに転生…そう、『転生』なんでね。一度死んでもらわないといけなくて、ですねぇ。
コホン、『代行者』として、異世界を救っていただきたいのです。」
説明をされても、正直意味がわからない。いや、これは説明になっているのだろうか。
「…えっと、つまり、ダーツの旅感覚で俺をブッ殺して?どっか他の世界で勇者的なことをやらせよう、ってこと?」
俺は首を傾げる。
「そうそう!それこそ異世界転生です!安心してください。しっかりと
『神々の加護』、モリモリ付けちゃいますからねぇ。」
異世界転生に詳しくない俺からすれば、そんなことは知ったことではない。
「いやマジで、そういうのいいんですわ。俺じゃなくて、やりたがってる人にやらせてあげればいいでしょ!俺はやだよ!ていうか、『代行』なんでしょ?!本来ならアンタらの仕事なのを、他人にやらせようって、そういうことでしょ?!
あっ!まずは名乗れ!失礼にもほどがあるだろ!人を勝手に殺した上に、変な使命与えようってヤツのやることじゃないぞ!!」
俺は身振り手振りで、大いに不満を露わにした。このあたりで、お姉さんの笑顔が引きつり始める。
「そ、そうですねぇ~、失敬失敬。
私は、女神ディメニア。次元を司る者です。」
随分とめんどくさそうな挨拶だ。
何考えてるんだ女神とやらは。
「はぁ、怪しいなぁ。今まで生きてきて、そんな女神の名前聞いたこともないけどな。本当に神様なの?」
俺のジト目に磨きがかかる。
「し、失礼な!アナタ、いい加減になさい。栄誉ある異世界転生者に選ばれたというのに、神に対して何という無礼な態度です!アナタのような人間は、初めてです!」
ディメニア、と名乗ったその自称女神は、ぷりぷりと怒り始めた。どうやらガチギレくさい。
話を聞く限り、そして話が全て本当なら、俺より前にも転生してる連中がいるようだけど…
何の疑いも無く受け入れたのかな?
「いや、だって突然そんなこと言われて、納得しろってのが…まぁいいや。話が進まないもんな。というワケで、俺はイヤなので、帰してください。」
「問答無用!アナタは『代行者』、そして『勇者』に選ばれたのです!世界を救うことでこそ、アナタの生命は輝くのです!
さぁ、行きなさい!神々の加護を携えて、皆のために!」
俺の要望から間髪を入れず、キレ気味の女神はそれらしいことを言い放った後、手を高々と掲げると、一瞬の光を放った。
俺はその眩しさに、思わず眼を閉じる。
そして、ようやく閃光の衝撃に慣れ始めた頃、俺は恐る恐る眼を開いた。
するとそこには、なんだかヨーロッパっぽい風景が広がっていた。
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