第1話「エレメンタルマスター・オンライン」■
第1話 エレメンタルマスター・オンライン
◆
偉人の名声は、それを得るために用いられた手段によって評価されるべきである。
by ラ・ロシュフコー。
西暦2034年4月1日。
(へー名声って手段なのね、ま、私は名声には興味ないけど)
少女は世界の名言集を読んでいた、人が何かしらの形で作ったストーリー。言葉が大好きな彼女の机には世界の名言集が並んでいる。
そんな中、彼女は姉に呼ばれる。持っているものはVRMMOと呼ばれるもの。
VRMMOは、近未来のバーチャル・リアリティ空間で実行されるネットゲーム。
【大規模オンラインゲーム】のことである。
「ゲームを起動したらオンラインゲームを楽しめる……っでいいのよね……?」
「ああ……その認識で合ってる」
姉妹が暮らす2人部屋での会話としては少しだけほど、異質だった。
品物はは例のアレである。
リング型ののVRゲーム機『
その中のソフト『
誤解の無きように補足すると、昔、デスゲーム事件に成った時のように。頭をレンジでチン出来るような。物騒な電力的出力は、初めから設計されていない。
それを手に持ちながら妹は話す。
「私、オンラインゲームとか初めてなんですけど……。本乙に大丈夫なの?」
「心配ない、数十人にテストプレイをやらせたからバグとかはない……はずだ」
「はずだ、て……大丈夫なの?」
「あーもーうるさいなー! こういうのはやってたら問題が無限に沸いてくるものなんだよー! とにかくやってみろ! 論より証拠だ!」
そういって妹をベットに寝かしつける姉。ゲーム機『シンクロギア』を被せる。
「あーあと、こっちの世界では私達はただの姉妹だがあっちの世界では私はゲームマスターで運営、お前はただのプレイヤーだからなストーリー的に言えない事と言える事があるから気をつけろよ」
「はいはい……」
天上院咲は普通の学生、中学1年生だ、姉の天上院姫が天才的な頭脳でゲーム会社へ貢献、そのままゲーム機『エレメンタルマスター』の開発を任されている。
今回私はそのゲームに興味は無かった、だが次第に出来上がっていくゲーム機の変貌に私も多少なりとも心を引かれた、3年だ、3年かけて念願だったゲーム機を完成させた。
ゲームが発売直前、私もその喜びを共に味わいたかった、だからあまりやらないゲームに興味を持ったのかもしれない、だからこれは、私自身が名を上げたいとかそう言うのじゃなく。
遊んでたら名が上がってしまった、とかそう言う類のものだ
そう、今思えばの話だが。
「じゃあ、始めるぞ」
「うん……」
瞬間、咲は瞳を閉じゲームの世界へと連れ去られてしまった。
《仮想世界へログインします。》
《いらっしゃいませ、エレメンタルマスターの世界へようこそ天上院咲様。》
◆
私の中二病は中学1年生で、頂点を極めてしまった。火水風土氷雷光闇。
超能力を使うバトルはこれらのパターンであり、8×8で64通りのバトルを楽しめる、たったそれだけの事を知る為に限られたお金を使って来た自分がバカらしく思える。
善悪論もそう、陰陽論もそう、大体の事はこの2パターンで分類できる。
それを理解した時。未知の知を知る喜びを削ぎ落とされた感覚に苛まれる。
そこへ行くと恋愛論の方がまだパターンがありそうな気がする。
ゲームの戦いに飽きた女子中学生としてはおかしいが、とにかくそう言う理由で闘いに意味を持たなくなっていた。
まばゆい光に包まれ、私、天上院咲はゲームのチュートリアルを終え、スタート地点である街からスタートしていた。
手足を動かす、首を動かす、ピョンピョン跳ねてみる。そんな準備運動ともにつかない、まるで赤ちゃんが初めて手足を動かす感覚と体感しながら。周りの景色を観る、町は活気に満ちていて、人が喋り、私と同じ初心者の方が私と同じような動作をして感覚を確かめる。
ここはどこのだろう? 私は誰? とまではいかないが、そんな気分である。
目に力を入れてみると、自分のステータス、地図、誰かが会話しているであろうログ画面、などが目の中に写し出される。
それ以外のステータス画面を開こうとすると、自分の腕を前にかざすとステータスバーが出現する。
「これが、ゲームの世界……」
咲は快感に震える、最新型のゲームを遊ぶのは何年ぶりだろうか……しばらくゲームと言うものに離れていた、その感動はひとしおである。手を握り締め、ここが架空のせかいであろうともまるで現実かのごとく遊べるここはまさに夢の空間と言ってもいいだろう。
空はフェニックスが飛び、陸をチ○コボみたいな鶏を大きくしたようなものが駆け回り、人々はやりたいことを見つけ職を付け武器を生産したり戦ったり、料理をしたりしている。
「オンラインゲームって事は、あんまりストーリー重視とかじゃないのかな~」
などと咲は考えてしまう、咲は大のストーリー好きで、面白い物があると西で流行れば飛びつき、東で大ヒットをした作品があれば一通り目を通しているのだ。
「ん~……! 私はやってきたぞー!!」
大声を出す咲、周りの人が気にしてこちらを見たが気にしない。
これからこのオンラインゲームの中で自由に世界を駆け回り、何をしたっていいのだ。
彼女の冒険はここから始まる。
そして、この世界で、少女は名を上げる。
ネットでの名前は
「ストーリーを攻略するか……それともそれ以外の事をやって遊ぶか……」
やりたいことは沢山あるが。
どれをやればいいのかわからず迷ってしまう状況にあった。
「よくわかんないから、とりあえず釣りでもしよ」
釣りはお金もかからないし、良い暇つぶしにもなる。街の外に出て人々が戦ってる所でも見ておけば勉強にもなるだろう。別段咲は釣りがリアルで得意と言うわけではない、ただ、ゲームではよく釣りをやっていたことを思い出したので釣りにすることにした。
街の外に出て良さそうな川で釣りを開始してみる、あたりには同じように初心者っぽい人達が何人かいる。
餌をセッチィングし、投げる。あとは待つだけ。その間にあたりを見渡す、一人で初級のモンスターを狩る人、二人で初級モンスターを狩る人、五人で初級モンスターを狩る人、皆同じモンスターを狩っていた。イノシシのようなウリボウのような自分の背丈よりも小さいモンスター、この世界。人はただ狩るっと言う単純なゲームだけで100時間や1000時間遊べる人間が居る世界だ。
咲には属性やパターンもないただ狩るだけのゲームが何故面白いのか理解できない部類に入る、やったことはあるのだが、単調な作業を永遠と続ける事に嫌気がさしてしまうのだ。
そうこうしている内に釣竿に仕掛けた餌にヒットが。こない……。
(流石に初心者ですぐに釣れるほど甘くはないか)
そう思いながら時間がゆっくりと流れる、川のせせらぎ、虫の声、雲の動き、外から見る城の景色、どれもこれもきれいだ、これで音楽でもあれば最高なのだが、っと咲は思ってしまう。
と、その時。
「お……! キタキタキタ!」
そう言い、隣に座っていたNPCの人物が、どうやらヒットしたらしく立ち上がり、竿を引き始めた。
ドゴオンっと大きな水しぶきを立て、クマほどもある巨大な魚を釣り上げた。
何処からそんな大きな魚が出て来たんだ…っと驚き唖然とする咲、自分の身長よりもはるかにでかい、川幅と魚の幅のアンバランスさに驚く。
「す、すごいですね、そんなのも釣れるんですか?」
「お? オオ! そうなんだよお嬢ちゃん! 釣りは初めてかい? この魚は釣りレベル30にならないと釣れないんだよ」
釣りは釣りでレベルがあるのか、と感心してしまう。
「へー……」
「お嬢ちゃん。もしかして、釣りもゲームも初めてさんかい?」
「はい、何にもわかんなくて、とりあえず釣りでもして様子をみようかな~と」
「そりゃいい、釣った魚は食べて体力の回復にでも役立てるといいさ、ここじゃあ、ゲームだから腹は空かないがな! がっはははは!!」
咲は興味津々そうに強大なデカ魚を観る、見た感じタイのような色だ。
「よくこんなに大きなの釣れますね」
「ああレベル30台じゃヌシって感じの大物だ」
◆◆◆
豆知識0002
名前◇EMO―エレメンタルマスター・オンライン―
分類◇EMO_ゲームソフト_現実世界_世界観
解説◇精霊や妖精と遊べる世界観で、プレイヤー達は超巨大型の機械亀の中で、ヨーロッパぐらいに広い大陸の上で暮らすこととなる。いわゆる剣と魔法の王道ファンタジーな世界観である。初期設定は巨大な亀の中で宇宙をさまよう。超巨大宇宙船のつもりだった。
豆知識0003
名前◇天上院咲(てんじょういんさき)
分類◇キャラクター_プレイヤー_主人公_女性
解説◇本作の主人公。いつも「最終決戦のつもりで行くよ!」と今を全力で楽しもうとするエンジョイプレイヤー。小学6年生までにストーリー性のある作品に沢山触れ、若干飽き気味に悟りを開いてしまった。少し速めに中2病になった少女。この時、VRゲームを遊ぶのは初めてである。
豆知識0004
名前◇天上院姫(てんじょういんひめ)
分類◇キャラクター_運営_姉妹_女性
解説◇本作の主人公の相棒という立ち位置。その正体は天才変態運営であり。0から1を生み出す天才少女。3年かけて今回のゲームを完成させた、と本人は言っているが。構想段階からだと、実際はもっと年月がかかっている。
豆知識0005
名前◇シンクロギア
分類◇VR機_第2世代機
解説◇第2世代機。民生用VRマシン、ヘルメット型のゲーム機で旧世代に戻ってしまったとも言われるが「今も昔も変わらないバイクのヘルメットと一緒だ」と開発者は主張。解像度を落とさずデスゲームなどにならないよう脳に与える出力のを低くしたまま解像度の更なるアップに成功した。
VR機。ハードの内側に埋め込まれた無数の信号素子で発生させた多重電界でユーザーの脳を直接接続し、感覚器官を介さずに脳に直接仮想の五感情報を与えて仮想空間を生成する。同時に脳から体へ出力される電気信号も回収するので、仮想空間でいくら動き回っても現実世界の体はピクリともしない。また、一定以上の痛覚もペイン・アブソーブ機能によって遮断される。
2032年XX月:天上院姫、神道社にとにかく入社。第2世代機『シンクロギア』に天上院姫は関わっていない【無監修】である。【2つの】メインプログラムが互いを修正し合うことで自身をメンテナンスしており、ゲームを滞りなく運営・維持している。繰り返すが【天上院姫は無監修である】。
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