12
逃げ込んだ資材置き場は、運良く大型施設を建設する為の物らしく、鉄筋や、足場や、重機などが保管されていて、身を隠すにはに困らない。
(さて、どうするか…)
目出し帽の奴等はバラバラに分かれて俺を探している、どいつもガタイが良くて強そうだ。銃を持っていないのがせめてもの救いだな。
(う〜ん、ここに三人と車に一人、こいつら全員を倒すのは難しいかな。とりあえず一人やってみるか…)
俺は、高く積まれた鉄筋に隠れながら、三人の中で一番動きの遅い奴に向かって、小石を投げつけた。
小石は男の側の資材にカンっと当たると、気付いた男がこちらに振り向いてゆっくりと近付いて来た。
俺は、義足側の靴を脱いで、少しだけ相手に見えるように置いて、居場所を撹乱した。
男は直ぐには近付いて来ず、冷静に仲間に伝達している。
(慣れてるね…仕方ない、使うか…)
相手もプロだ、騙し合いには慣れている、そう易々と引っかかってはくれないよな。
目出し帽の三人は、俺を取り囲む様に徐々に三方から、距離をジリジリと詰めて来る作戦のようだ。
確かに俺の後方は最終的には崖、行き止まりみたいなもんだ。最悪、一か八か崖から飛び降りるって最終手段は残されてるけど、それは勘弁だぜ。
(奴等には悪いが、ここは飛び道具かな…)
突然だが、俺はサイボーグ…ではないけど、義足だろ?そこに秘密があるんだ。
それが、こういう事さ。
まず俺は、右脚のズボンを破いて義足部分を剥き出しにする。
そして、膝をトントンっと軽く二回叩くと、脹ら脛部分に静脈認証システムが現れる。
そこに手を当てると、脹ら脛がパカっと開く。
ここに銃やら何やらの道具を隠しているんだ。これ、つまり隠しアイテム。
(仕方ない、使うか。これ実戦で使うの久しぶりだな、試しに一発、一番とろそうなのに、お見舞いしよう)
丁度、雨も小降りになって来た。
さ、戦闘開始だ。
カンッ!
初手は、さっきと同じく、動きの遅い男に向かって小石を投げる。
そして、動揺させたところで、わざと見つかる様に、男の前を駆け抜ける。
見え見えの揺動作戦だけど、俺が何か企んでいる事を分からせれば、それでこれは成功。
その後、すぐさま左手に曲がり資材の隙間に身を潜め、続け様に煙玉を投げつけた。
煙玉には特殊な発光塗料が含まれいて、煙玉を浴びると塗料が付着する。
専用のレンズから覗くと、遠くからでもキラキラ光って見つけ易いんだ。
だが生憎、今日は雨で、幾分効果は薄れてしまったが、それでも俺にとっては十分さ。
男は予想外の出来事に、少し慌て、視界不良で行き場を無くしてしまい、キョロキョロとしている。今がチャンスだ!
煙の中の男に向かって、ズキュンっと一発打ち込んだよ。
安心してくれ、殺しはしない、2、3時間おねんねするだけさ。
(まず、一人と…)
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