第77話 百合に毒されてる件
「はい。今日は
その日の夜。ちょうど夕食が出来たらしく百合に呼ばれて二階に降りるとお店なんかで見かける回鍋肉定食ぽいものが出来ていた。
「おおっ。中華料理店で出る定食みたいだな。百合も腕を上げたもんだ」
元々百合の料理の腕は悪くなかった。でも、結婚してから色々レパートリーを増やしているらしく、時折こうやって新しいメニューを出してくれる。
「でしょ?撫でて撫でてー」
そして、これだ。抱きついて来てのおねだり。
甘え方を研究した成果なんだけど、ぶっちゃけ可愛い。
「よしよし」
俺も俺で望むままに自慢の長い髪をなでてしまう。
百合の思うツボだとわかっているのだけど、甘えられたら応えたくなってしまうのがまずい。
「んふふー♪」
この声がまた可愛らしくてますます甘やかしたくなってしまう。
全身を抱きしめて「好きだぞ」なんて囁いている俺自身がいる。
「あー、もう。すっかり甘えるのが上手くなって……」
まさか結婚してから別の魅力にハマるなんて思ってもいなかった。
「だって、私も憧れはあったんだもん。幸せー」
頭を無邪気にすりすりしてくるうちの嫁さんが愛しすぎてちょっとまずい。
「なあ。後で、
他のご家庭の新婚さんもこんなことをしてるんだろうか。
気がつけば耳元でそんなことを囁いていた。
「んふふー。作戦通り?」
「おい」
「冗談だよ。ご飯食べてお風呂入ったら、
甘く囁く百合。
普段着にピンクのエプロンていうのがまたまずい。
つーか、このエプロンって……。
「このエプロン新しく買ったのか?」
「だとしたら、どう思う?」
「まあ。似合ってるな」
「どういう意味で?」
こいつめ。
「可愛いっていうか、少し色っぽい、な」
「やっぱり。誘惑作戦大成功」
「結婚前はもっと無邪気だったのに」
嬉しくないわけじゃない。
ただ、何か百合の思惑通りなのが癪に障る。
「私もまだまだ成長するんだよー」
「嬉しいって思う辺り、百合に毒されてる」
「じゃあ、もっと毒されて欲しい」
って、気がつけば10分経過。
「ご飯食べようぜ。せっかく作ってくれたのに冷めるだろ」
「うん。いちゃいちゃはまた後で♪」
「……」
心の中でため息をつきながら、新作料理に舌鼓を打つ俺たちだった。
夕食とお風呂の後。
「にゃ♪」
言いながら頭をこすりつけてくる百合。
あざとい。あざといけど可愛い。
「お手」
「はい」
抱き合いながらちょこんと手のひらを置いてくるのが器用だ。
「あー、もう。開き直るか」
顔を持ち上げて少し強引に唇を合わせる。
仕方ないんだ。百合が可愛いのが悪い。
「今日はちょっと強引だね?」
「誘惑には逆らえなかったよ」
負けだ。負け。
「いつもこのくらい積極的だともっと嬉しいんだけど?」
「照れが先に来るんだよ。大切にしたいし」
付き合ってからそうだけど、百合が先に甘えてくる事が多い。
そういう時、たまに悩む。
欲望のままに色々してしまいたいと思う気持ちと。
大切に、優しくしてあげたいと思う気持ちと。
「優しいのも嬉しいけど、強引にされても嬉しいんだよ」
「言いたいことはわかるけどな」
背中を撫でて少しずつ気分を高めて行く。
「やっぱりまだまだだね。もっと積極的になってもらわないと♪」
「十分積極的になってるつもりなんだけどな」
「もっと強引になってくれるのが目標」
「近い将来にそうなってそうなのが怖い」
いつか。今日のキスみたいなことを俺からすることになりそうだ。
そうなったら、本当のバカップルじゃないか。
「絶対にそうするから」
「ストッパー役が居なくなるだろ」
「居なくなってから考えよ?」
やっぱり毒されてる。
仕方ない、じゃなくて。
そうなるのもいいかもしれないって思ってる。
「そうだな。優たちには呆れられるかもだけど」
「うんうん。その調子、その調子♪」
こうしてお互い心ゆくまでいちゃついた俺たちだった。
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