第47話 新婚旅行(4)~朝のイチャイチャ~

 気が付いたらなんだか意識が覚醒していて、隣にはうつ伏せになったまま寝っ転がった百合ゆりの可愛い可愛い寝顔。時々肩が上がったりうわごとをいったりと見てるだけで飽きない。


「修ちゃん……気持ちよすぎて辛いよう」


 何の夢見てるんだよ。いや、時々百合のことを気持ちよくしたい余りにちょっとやり過ぎたて疲れさせちゃったことがあるし、わかる部分もあるんだけど。


 昨夜は疲れすぎて寝間着に着替えることすら出来なかったわけだけど普段着をしてベッドに突っ伏している様も可愛いかもしれない。


(顔洗おう)


 百合を起こさないようにホテルの洗面所から出る暖かいお湯で顔を洗うと段々意識が覚醒してくる。日本のビジネスホテルとも異質な異国情緒が漂うホテル。英語表記のアメニティや説明書きにもここが外国なんだと強く意識させられる。


(でもまだ少し眠いな)


 新婚旅行の予定は大雑把にしか決めていない。ベッドに戻って今から寝間着に着替えてお昼まで疲れを癒すのもいいかもしれない。百合も賛成してくれるはず。


 洗面所から出ると百合が既に順番待ちをしていてやっぱり気分を切り替えたいらしかった。


「百合。今日の予定で提案あるんだけどいいか?」


 少し気怠い身体でお互いを見つめ合いながら言ってみる。

 こいつも一晩寝て疲れが幾分取れたのかふにゃっとした微笑みに癒される。


「お昼までホテルでゆっくりしない?てこと?」


 こいつが淡々と言ったことがズバリ本音なのでどうにも困る。


「心読むなよ。合ってるけどさ」


 なんでこう的確に俺の本心を言い当てて来るのか。


「こういう時に修ちゃんが何考えるかくらいわかるよ」


 言いながら近づいてきてついばむ様なキス。

 昨日は疲労困憊だったけど欲情してしまいそう。いかんいかん。


「もちろん間違ってないけどさ……もう少し慎みをだな」


 嘘だ。欲望が抑えられないから困るというだけ。


「私に慎みを期待するのが間違ってるのは知ってるでしょ?」


 次は下半身に手を伸ばして来られた。

 百合のやつ昼までいちゃつくつもりだ。


「百合。そんなことされると大きくなってくるんだけど」


 たんに触れられているだけじゃなくて朝の妙に無邪気な様子もあって色々こらえづらい。


「そのためにしてるんだよ。新婚旅行だっていうの忘れてない?」


 咎めたてするような言い方。


「そんなことを言われたら俺の方も自制できないぞ」


 言ってて別に自制しなくていいのではと思う。


「今日は余裕あるし自制なんてしないで♪」


 こういう時に百合は素直に欲情をぶつければいいと照れもなく言ってのける。

 紳士的に接したいと思うわけで少し複雑。

 でも、百合がこう言ってるのは彼女なりの望みなんだろう。


「じゃあ……」


 まずは百合の弱い首筋をつつーっと触れる。


「ああ……」


 お望みにあったようで内心ガッツポーズだった。

 と思ったら今度は下半身に伸びる手。


「いやいや。今は百合のこと気持ちよくしてるんだから」

「私がやられぱっぱなしで悔しいの!」

「まあ、触れられるの嫌じゃないなら好きにしていいけど」


 こんな感じで疲労が回復した身体でお互いリラックスいていたせいであっという間にムードが高まってしまった。


 せっかくのイギリスだというのにこうして朝の2時間程を新婚夫婦の営みというやつに費やしてしまったのだった。こういう時に欲情には勝てないなと思い知らされる。


「修ちゃんいっつも意地悪だよ」


 嬉しそうで、でも少しだけ拗ねたような言葉だった。


「それ言うなら百合も意地悪だろ」


 相手が俺だからいいけど、そうじゃなかったら逆セクハラ案件になりかねない。


「修ちゃんだから意地悪するの。一緒にいると安心する相手だから」

「お前も今回は誉め言葉いっぱいだな」

「新婚旅行でテンション上がってるのかも」


 こうして朝に致した俺たちは今日の予定についてぼんやりと語り合ったのだった。


 実は本音では少しだけ汚れがあるけどスペースに余裕があって台所も給湯器もあるのはホテルとしては悪くない。


「お互いもう少し二度寝しようか」

「さんせーい」


 百合のことだからそう思っているのがよくわかる。

 でもま、新婚旅行だしお互いが楽しむのが重要だよな。

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