第7章:大迷宮【アビス】I
第1話【大迷宮、解放】
「今日はどこの
いつも通りにフェイは
ご主人様であり最強のSSS級
最近では迷宮区案内所もSSS級探索者であるユーリには一線を引いて後継の育成に注力してほしい様子だが、そんなことをせずにいつまでも現役でいるのがユーリ・エストハイムという探索者である。
迷宮区の情報が記載された羊皮紙を一枚ずつ剥がしながら、フェイはユーリに「ここは?」と聞く。
「どれも踏破報酬が安いねェ」
「でもこの掲示板の中だと上等な類だよ」
「ッたく、そんなにアタシに引退してほしいのかねェ。引退しちまったら楽しくないだろうに、アタシが」
「マスターはそういう人だって分かってるし、俺も引退はしないでほしいかな」
フェイも正直な話、ユーリにはまだ最前線で頑張ってもらいたいのだ。
近頃、小さな
最強の探索者組合『
「うーん、まあ仕方がないさね」
フェイが手に掲げる羊皮紙をまとめて強奪するユーリは、
「また
「マスターは平気?」
「アタシを誰だと思ってるんだい。踏破報酬を重要視する
「そうでした」
フェイは「じゃあ俺は奴隷待機所にいるね」と声をかけてから、
いや別に自慢をしている訳ではないが、ご主人様であるユーリはフェイに対して非常に甘い。もう甘々である、奴隷のように酷く扱わないし。
ユーリが五箇所ほどの迷宮区情報を、まとめて迷宮区案内所の受付に提出しようとした瞬間だ。
「!?」
唐突に激しい揺れが
奴隷待機所から飛び出したフェイは、急いで主人であるユーリの元へ駆けつける。
ユーリも激しい揺れに異変を感じ取った様子で、虚空を睨みつけて「何事だい!!」と叫んでいた。彼女が倒れて怪我でもしないように抱き止め、フェイは叫び返す。
「地震だよマスター!!」
「ンなこたァ知ってんだよ!! 何で地震が起きたんだい!!」
「知らない!!」
「じゃあ黙ってな!!」
言われてしまった。
仕方がないので黙っていることにする。
激しい地震は
「…………収まってきたね」
「そうみたいだねェ」
徐々に地震が収まり、それから完全に止まる。
通行人も、
フェイも抱き止めていたユーリを解放し、迷宮区案内所の外を見に行こうとする。その寸前でユーリに腕を掴まれ、外に出ることは叶わなかった。
ご主人様は、この地震に心当たりがあるらしい。迷宮区案内所の外を睨みつけると、
「行くよ、フェイ」
「え、どこに?」
「アルゲード中央広場さね」
混乱した街並みに、迷宮区を踏破した際に聞こえる女性の声がどこかるか流れる。
それは、ユーリが待ち望んでいた瞬間だった。
――
☆
アルゲード中央広場は、アルゲード王国の中心にある広場である。
普段は中央に据えられた噴水で遊ぶ子供や、長椅子に座って休む老夫婦などが見られる。大道芸人もアルゲード中央広場で自分が鍛えた芸を披露して、絵描きや靴磨きなんかがいる。
その中央広場が、巨大な穴と化していた。
噴水や舗装された道はなく、ただ途方もなく深い深い穴が広がっていた。
「これが
フェイは穴を覗き込むが、やはり底は見えない。ヒュオォ、という嫌な風がフェイの頬を撫でるだけだ。
「マスター、これは本当に
「
銀色の散弾銃の在処を確認刷するユーリは、
「フェイ、行くよ」
「え、マスター準備とかしなくていいの?」
「食材なんかは現地調達さね。
そうだ、この
どこまで繋がっているか不明な迷宮区を、たった一週間で踏破しなければならない。かなりギリギリの戦いになりそうだ。
一週間しか猶予がないのならば、すぐに潜り込まなければまずい。ユーリ以外に大迷宮を踏破できるとは思えないが、一週間で閉じてしまえば次に開かれるのは一〇〇年後である。
「待てコラーッ!!」
「勝手に入るな!!」
「順番があるだろうが!!」
「SSS級
その時、
順番もクソもない。
この大迷宮【アビス】は誰でも受け入れる。ただし一週間しか開かないのだ。開いたこの瞬間から一週間であれば、構っている時間なんてないのである。
ユーリはまだ遠い場所にいる格下の探索者連中を一瞥すると、
「フェイ」
「どうしたマスター」
フェイの腕を掴んだユーリは、
「飛ぶよ」
「え?」
フェイの腕を掴んだまま、ユーリは飛んだ。
地面を蹴飛ばし、その先には
空を飛ぶなんてことはなく、そのまま重力に従って穴の底を目指して落下していく。
「わわわわわわわわぎゃあああああああああああああああッ!!」
深い深い穴の中に、フェイの絶叫が轟くのだった。
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