第22話 山里の春
その夜楽しかったのか
志穂と篤穂は篤志の兄、麻志
と莉奈に抱かれて眠っていた。
「穂乃香ちゃん、あなた達の
お布団してないから
とりあえず私達の ベッドに
寝かせて来るわね。」
「ああ、すみません
後で連れに行きますね。」
「穂乃香ちゃんお願いがあるの
今日私達と子供達
寝かせてもらっていいかしら
子供と朝までって、めったにない
から嬉しくて‼」
義兄夫婦に子供が居ないのは
仕方が無い事だけど
義姉が気の毒に思える
子供好きで優しい義姉。
そのうち、そのうちでもう9年
出来て居ない
姉も病院へ行ったが、排卵が
小さくて中々出来にくいらしい。
排卵誘発剤をもらって飲んでも
副作用の吐き気が耐えられず
義兄も両親も義姉には
「無理しないで自然に任せ
たらいい」
と言ってくれてる。
「勿論です。
お義姉さんが迷惑でなければ」
義姉は喜んでありがとうと言って
くれた。
篤志も何人かの友人と会って
楽しかったのか酒を飲んで滅多
にこんな事は無いのにグッスリ
眠ってしまった。
その夜
「莉奈、子供可愛いな‼」
麻志は莉奈の顔を見ながら
呟いた。
「うん女の子は特に可愛いわね💕見て見てサラサラの髪
私やっぱり子供ほしい
麻志の子供がほしい。」
「そ、そうだな!でも俺は莉奈が
居てくれたらそれで良いんだ
こんな俺の所へ嫁に来てくれて
両親とも同居してくれて
有難いと思ってる。」
「でも、私、何もこの家に
してない、子供を産むことが
長男の嫁の務めなのに
申し訳無いわ。」
「バカ、何年前の長男教か!
親父達も莉奈の事は褒めてるし
感謝してるさ
篤志だって穂乃香ちゃんもだ、」
「だって
⚲_⚲`子供が産めないのよ」
「子供が欲しくて莉奈と
結婚したんじゃない
莉奈と一生一緒にいたいから
結婚したんだ。」
「志穂と篤穂を可愛がれば
良いじゃないか!」
「うんそうだね。
穂乃香ちゃんもホントの妹みたいに
思えるのよ。」
そう言われ、悲しげな莉奈の顔を
見たら麻志も無いもの
ねだりとは思うが
何とかしてやりたいのが男‼
麻志は莉奈の手を取り隣の
空き部屋へと入って行った。
2人の子娘は久しぶりの帰省に
疲れたのか朝までグッスリ
眠って2人が居ないのに
気付いていない。
しばらく2人きりに寝かせて
しまって心配だったが
可愛らしい顔を見て
麻志も莉奈もホッとして
2人を挟んで又眠りについた。
山里の朝は早い
そんな夜は過ぎて直に鳥が鳴き出す。
莉奈と麻志は、野菜の収穫へと
畑に出た。
「篤志、穂乃香ちゃん」
1歩遅れて2人も到着する
「手伝うよ!」
子供達は篤志の両親へ預け
畑へと乗り込んできた。
朝4時から8時までの朝前仕事
穂乃香はキュウリとナス
スイカの植え付けを習った。
篤志は手馴れたものでミニトマト
の収穫、ハウスのキュウリの
収穫をしていた。
農家は、やる事が沢山あって
穂乃香には新鮮だった。
耕運機やトラクター🚜を操る
篤志はとてもカッコよかった︎💕︎💕
惚れてしまう。
ジッと見る眼差しに篤志も気付いて
「ど━━━━した穂乃香
疲れたか?休んでいいぞ!」
トラクターのドドドドドド
と言う音に負けないように篤志は
叫んで来る。
「大丈夫よ━━━」
穂乃香もニッコリして答える
朝の空気はスッキリして
気持ちいい
ここから見える山も森も林も
田んぼや畑も凄く美しい。
穂乃香は久しぶりに深呼吸を
した。
朝前仕事も終わり義兄夫婦と
一緒に耕運機の荷台に乗り込み
ガタゴトと帰る。
初めて乗った耕運機に感動した
ゴツくまあるいデカい耕運機の
タイヤは丈夫で目を見張る
山道を進み集落が見えて来ると
子供達が田んぼに走り手を
振っているのが分かる、
8時朝ごはんに帰ると
義母が朝からたくさんのご飯を
用意していた。
義兄夫婦も篤志と穂乃香も
席に着く。
ふんわりまあるい卵焼きを志穂
が指さして
「コレ、志穂が見つけた卵で
作ってくれたんダョゥ」
「あ、コッチの味噌汁の
葉っぱは篤穂が見つけたの‼」
可愛らしい手を出して三葉を
指さす。
「明日は皆で山菜取りに
行こうかね」
義母の提案に
\\わ━━━い////
\\やった━━~~~////
皆で大はしゃぎ
そんな時篤志の携帯が震えた
「おっ!! 圭介からだ」
篤志は食卓を離れ台所へと移動した。
「え、土曜日か!!
多分無理かと思うよ
ワリイまた今度な!!
明日は皆で山菜取りに行くんだ
子供も大はしゃぎだよ(笑)」
「アホか!!
昼間っから飲む奴いるか
夕方からだつ━━━━━の!!」
「夕方?
市内迄、出るのか?」
「おう、帰りか?心配するな
運転出来る奴いるし
女の子は飲まない子いるし
ちゃんと送るってサ」
「お前何か企んでない?」
「ナイナイ企む何を?
久しぶりに皆が会いたがってん
だからいいじやんか!」
「嫁に聞いてみる!」
「は?聞いて見る?
臀に敷かれてんなあ
ブヒャヒャヒャおまえ、情けな!!」
「・・・」
「兎に角明日18時居酒屋勝太
に集合‼️」ブチッ
「どうしたの?」
携帯をぶち切りながら不貞腐れる
俺を気にして穂乃香が立ち上がっ
て来た。
「圭介の奴、勝手に飲み会決めて
んだよ!行かね━━━━っーの」
「私送り迎えするよ!
二時間くらい顔だせば?」
「・・・いいの?」
「迎えに行くし平気!!
何年ぶりかなんでしょ
良いよ!」
「市内迄1時間位かかるよ
ヤッパリ
送り迎えはいいよ、兄貴に
頼むか、市内には行きなれてるし
穂乃香も知らない道は
危ないし、夜だし
大丈夫帰りは誰か送ってくれる
らしいしな!」
「そう、じゃあ、お義兄さんに
聞いて見て。」
「おう。」
兄貴はスンナリとOKしてくれた。
次の日
見事な晴天5月晴を絵に書いたような
天気だった。
山の途中迄整備された道路が
広がりかなりバカでかい有名
ホテルもある。
名の知れたアーチストが利用する
野外ステージも
ド━━━━━━━━ンと
広がっている。
志穂と篤穂はキャッキャ言いながら
車の外に出る
見晴らしのいい山の上迄舗装されて
いるのは子供の頃には
想像出来なかったらしい。
「さあ、がんばろうねぇ」
目標はワラビ1年分
ゼンマイ1年分
それにウド1年分
志穂と篤穂が喜んだ理由は
黄色一面に咲くスミレ
白いのもあるし紫色もある
キツネボタンに春リンドウ
子供達は花を摘むのに夢中
足を進めると野原は春の花が咲いて
いてシロツメクサもまけじと
軍をぬいている。
高山植物なのか知らない花も沢山
ある。
山の上から下を見ると山々に
囲まれた美しい自然
篤志が真っ直ぐで逞しいのは
此処で育ったからかもしれない。
他の大人達は林の中に入り込み
山菜取りに夢中だ。
お義母さんの作るお煮しめも
山菜おこわもこうやって
取ってくれていたから美味しいんだ
皆でピクニック気分を堪能した後は
大量に取れた山菜!
今度は竹山に行って
タケノコ掘りが待っている。
車で坂道を降りていくと
「はい止まって」
義母が声を上げる
こんもりとした森の中へ
「ここはうちの山だよ
新鮮な三葉が自生してるのよ」
皆で中に入って行くと
見事な見たことも無い三葉は
柔らかい大きな葉っぱの下に
黄緑色の柔らかいはっぱがある。
杉の木が並ぶ根っこの所に、
所狭しと生えていた。
「根っこは残すんだぞ!」
兄貴の言葉に皆で頷く
もう強い三葉のいい香りが
一斉に漂った。
「今日は混ぜご飯に
茶碗蒸しね、ウドの酢の物に
山菜のてんぷらに三葉のおひたしに
決定❗」
「キャッ美味しそう。」
穂乃香が嬉しそうな声をあげると
篤志もニコニコ
「ほらほらー
今度はタケノコ掘りよー」
義母が号令をかける!
山里の春は忙しい
それに美味しいんだ。
BOXカーの後ろには山菜とタケノコと
可愛らしい春の花でいっぱいだった。
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