七夕

ピート

 

 あれから三年になるのか……約束の場所に来たものの、彼女の姿は見あたらない。


 三年間、お互い密に連絡を取り合う事もしないまま、今日という日を迎えてしまった。


 相手が地球の裏側では、なかなか会う事もままならない。


 メールや手紙でのやりとりはしていたものの……忘れてるのかなぁ。




 三年前、彼女が旅立つときに僕らは小さな約束を交わした。


『結婚の意志があるなら、三年後、七夕の日に帰ってくる』


『結婚の意志があるなら、彼女を空港で迎える』……それが今日だ。


 彼女とやりとりはしてるのだが、改まって彼女の気持ちを確認するのが怖くて、そのまま空港にやってきてしまった。


 お互いが慌ただしい生活を送ってるのは確かだ。


 彼女から言い出したこの約束……確認しておくべきだったかなぁ。


 だが、いっこうに彼女は現れない。


 不安は募るばかりだ。

 そもそも『七夕の日』という約束をしただけで、何時の便で彼女が着くのかすらわからない。


 というワケで、朝から飛行機が到着する度に、ロビーの辺りでウロウロとしているワケだ。




 メールだけでもしておくべきだったよなぁ。

 時間が過ぎれば過ぎていく程、焦りと不安で押しつぶされそうになる。


 …………三年前、確かに約束したよな?






 当時の記憶を遡る。


 僕らは大学で出会った、同じサークルに彼女が後輩として入ってきたのがきっかけだった。


 僕と違い、彼女は実家を離れての一人暮らしだった。


 そういえば、彼女の郷里は七夕祭りが有名とか言ってたよな。



「こんな時季に『七夕』やってちゃ、織姫も彦星もなかなか会えないよね」


「まだ梅雨が明けてないからなぁ」


「でも私の田舎なら、毎年織姫も彦星もデートを楽しんでるわよ」


「……晴れの日が続いてるのか?」


「違うわよ。旧暦で行うのよ」呆れ顔で微笑む彼女の笑顔と一緒にそんな会話がよみがえった。




 たぶんそうだ…………旧暦なんだ。


 帰ったらメールを送ろう。

 最後の便の到着を確認すると、僕は家路を急いだ。



『織姫へ


 貴女との再会を心待ちにしてます。


      彦星』






 Fin

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七夕 ピート @peat_wizard

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