バルの独り言

バル@小説もどき書き

無知への興味

 バルは義務教育を受けている時代に疑問に思う物事は多かったように思うが、今思い返しても疑問に思うのは薬物乱用防止教室なるものだった。

 あれが開かれている理由は誰もが分かっているだろう。薬物乱用を防止するためのものである。もう少し詳しく言うと無知なものを騙そうとする黒い手から身を守るために知識をつけようといったものだろう。

 しかしバルには、一歩間違えれば薬物乱用促進教室になるのではないかと疑問に思っていた。

 日常生活では得ることのできない快感を即座に味わうことができると説明される。子供でも快感がいいものであるというのは分かっている。そしてそれによって得られるものが他とは比べ物にならないこと、日常生活が手に付かない程のものであることが説明されるのだから興味が湧いてもおかしくないだろう。

 当然のことながら、その反動とでもいうべきか、身体への影響は重々説明される。骨と脳が役立たずになるとは恐ろしいものだ。


 バルは身体への影響をある程度理解していたのだが、やはり快感には興味があった。快感は達成感で得られるものと似たものらしいが、達成感を得るにはそこに到達するまでに時間がかかるだろう。道のりが長く険しいほど達成感も大きくなると認識しているし、そこまで間違っていないだろう。これを連続的、定期的に得るのは非常に困難である。

 しかしながら教室で取り上げられるような薬物は入手できるものではない。そう思っていた。いつだったかの同教室で警察の方が来て、現物を見せてくれたのだ。それどころか順番に近くで見ていいと言われたのだ。もちろん中身が出ないように厳重に蓋がされているのだが、それでも今手の中にあるというのは興奮と緊張の入り混じった何とも言えない感覚になったことを覚えている。


 しかしバルも死にたいわけではない。できないことが増えていく中で生きながらえたいとは思わないが早死にしたいとも思わないのだ。


 というか先日までそんなことを思っていた義務教育時代を忘れていたくらいだ。幼少の頃の興味とはその程度のものである。


 知らないものに興味を惹かれるということは少なくはないだろう。人から話を聞いただけ。どこかで記事を読んだだけ。特集を見ただけ。

 これらは存在を知っているだけで中身は知らない、無知である。存在を知らなければ知らないとも思えないので、存在だけ知っている状態は無知なのである。

 存在を知ってしまったために興味をそそられ、実際に体験したいと思う。

 これはいかなる事にも、いかなる人にも言えることだろう。そのため情報を操作することで洗脳まがいのこともできるらしいがそんなことはどうでもいい。

 無知であるがゆえに興味を惹かれることがある、これを知っているか知らないかで行動の選択も変わるだろう。

 知らなければ興味という衝動に任せて行動するだろう。

 知っていればいったん落ち着いて情報を多面的にとらえることができるかもしれない。




 結局のところ何が言いたいのかは分からないがこれは独り言なので問題ないのである。

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