人間嫌いな天使たち
ナガイエイト
第1話
人間の幸せの為に働く我々天使は、日々の重労働に耐えかねています。
天使は、神様のように全知じゃない。天使は、神様のように全能じゃない。故にどうすれば人間に降りかかる災いを回避させることが出来るのかを、日々考えます。
正直、何でこんな地を這って生きる生物のお世話をしなきゃいけないのかと、日毎夜毎思っています。
罪を重ねて生きる人間を、何故神様は愛するのか甚だ疑問です。
今も人間は蟻を踏み殺しました。
人間の誰かが、この世に生きる命に殺していい命などはない、どれもが平等で、尊い命だ、と言ってました。私はそれに感銘を受けました。ですが、同じ人間には一切刺さっていないようで、よって更に人間が嫌いになりました。
そこで私たち天使は考えました。一度人間に罰を与えようと。
神様には、後々謝るとしましょう。
「人間へ罰を与える会議を始めます」
ちなみに会議長は私です。平天使の私が会議長だなんて、すごく緊張してしまいます。
それにしても、私合わせ総勢100名近くの天使が一度に同じ空間にいると圧巻ですね。
穢れ無き純白の翼が200枚。
翼の単位は枚で良いんでしょうか?
ま、それはさて置いて。
「では、意見のある方は挙手をしてください」
私の一言で、今まで静寂だった空間に、99枚の布が擦れる音が流れました。
まさか全員意見があるなんて思いもしませんでした。全員に訊かなきゃダメでしょうか。会議長としての立ち振舞いがてんで分かりません、助けてほしいです。
しかし、この会議が上手くいけば私は出世街道まっしぐらです。いや、勝手に人間に罰を与えるんですから、もしかすると追放の可能性もありますね。今すぐやめよっかな。
なんて、今の私は思いません。今の私は、人間に対する報復心で一杯です。
私は咳払いをして、取り敢えず適当に、隣に座っている240歳程の天使さん、エリーザさんを指名しました。
「奴ら人間は自身を正当化し続ける醜い種族です。私はそんな奴らがどこまで自分を正当化出来るのかが気になります。そこで一度私たちが奴らの脳を操作して大事な同種族同士で殺し合いを起こしませんか」
起伏のない、読点のない喋り方で、彼女の感情が上手く伝わって来ませんが、まぁ言いたい事は分かりましたし、どれだけ殺したいのかもなんとなく分かりました。
「なるほど、良い案ですね、検討します。では」
次に私は、93歳の新人天使さんウェルテルさんを指名しました。
「うちはやっぱ全員虐殺しかないと思うわ。エリーザさん同様に脳を操作して、自殺に追い込むっちゅうのはどうや?」
中々に危ない思考をしていますね彼女。いやまぁ、こんな会議に参加している時点で皆同様に危ないのですが。しかし分類するなら、彼女はエリーザさんと同じ部類ですね。
ですが、これも中々に良い案です。
「殺しはやめませんか!」
机を叩き、突然立ち上がったのは、えっと、345歳のベテラン天使さんの、えーっと、カリギュラさんですね。
「どうしてですか?」と私は聞きました。
「えっとですね、神様が人間を贔屓しているのは皆さんお分かりですよね」
「分かりたくない程にね。神様露骨すぎですもん。生まれて間もない思考でもすぐに分かりましたよ。もう少し隠そうとしてほしいですよね」とウェルテルさん。
「そうですよね。そうなんですよ。露骨過ぎる、隠そうとしてない。違う、そうじゃないんですよ。神様は隠そうとしても隠しきれない程の愛情を、人間に抱いているんですよ。愛情を水だと仮定して、手で掬い上げても隙間から漏れ出てしまう。量が多いなら尚更です」
なんとも分かりやすい説明ですね。そうですか、それほどに人間への愛情を抱いているのですか。
「だから人間を殺したら、神様はお怒りになられます。今度は私達天使が、この楽園を追放されてしまうかもしれません。ですから、殺戮は禁止にしましょう」
やはりそうですか。
私は、カリギュラさんの意見を採用し、人間の殺害を禁止し、殺さない方法で、人間に罰を与える案を募集しました。
「それでは次、意見のある方挙手を」
・・・・。
人間の殺害を禁止した途端に挙手数がゼロになりましたよ!どんだけ殺したかったんですか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます