第45話 ゲーム大会編終了
かのアインシュタインが提唱した特殊相対性理論とは、時間や空間は伸び縮みするものだとうたったものである。
それはそれとして。
「こっちこっち! 今度は格ゲーで勝負よ!」
一日がとてつもなく長く感じるのは、俺の運動が限りなくゼロに近づいているからなんだろうか。
(どうしてこうなった)
俺はただ、レベルアップで獲得したゾーンを使って俺ツエーがしたかっただけなんだ。
それなのにふたを開けてみたらどうだ。
ゲーマー女子高生に捕まって永遠ゲームの相手をやらされる羽目になっている。
「あっ、ちょっと待って! ちがっ、このコマンドじゃなくて、ああ!」
ちなみに、この格ゲー戦はお互いにコマンドがわからない初心者同士での戦いだった。
必死にコマンド入力しようとする龍華に対し、俺が選んだ戦術はガチャガチャ。ボタンを適当に入力して適当に技を出す奴である。
お互いに目の良さを全く生かせていない。
「うあー! また負けたあああ!」
「おい、もうそろそろいいだろ……」
「えー、せっかくじゃん! もうちょっと遊ぼうよ!」
「おじさんと若者の体力を一緒にしないの」
まあもしかすると隠しパラメータとして存在していてきちんとレベルアップで上昇もしてるけど俺がプラシーボ効果で恩恵に気づいていないだけって話もあるかもしれないけど。
結局のところ言いたいのは一つ。
そろそろ疲れた。
「……でも」
が、龍華は心底名残惜しそうにしている。
そこまで目に見えてへこまれると、俺は俺でちょっと罪悪感を覚える。
こういう時は折衷案を模索するに限る。
「ゲームならまた今度やればいいだろ」
「今度って、いつ? お兄さん、このあたりの人じゃないでしょ?」
「ん? 徒歩圏に住んでるけど?」
「……へ?」
なんでそんな認識の違いが?
「で、でも! あたし結構この周辺のゲーセンに立ち寄ってるけど、お兄さんを見た覚え無いよ!?」
「そりゃそうだろ。ゲーセンとか無縁の人生送ってきたし」
「ゲーセンと無縁の人生!?」
龍華は、猿とゴリラのゲームでボス戦が始まるときくらい目をひん剥いた。いやさすがに目玉が飛び出すことは無かったけど、それくらい目を見開いてた。
人間ってこんなにまぶたを引っ張れるんだなってくらい。
「……あはは、あたしも目がよくて最初からいろんなゲームで高得点出せたけど、お兄さんはあたしよりずっとすごいね……」
「ま、サングラスがハンデにならないくらいにはな」
「……ねね。ちょっとだけでいいからさ、素顔見せてくれない?」
「知ってどうするんだ」
「次にお兄さんと会った時、サングラスしてるとは限らないでしょ?」
町に出るときは基本サングラスだけど、信じてもらうために説得するのは骨か。
だったら素直に顔を見せた方が楽、の気がする。
そうするか。
「……お兄さん、カッコいいんだね」
「惚れなおしただろ」
「……そうだね」
……あんまり素直に肯定されると恥ずかしい。
やっぱ精神力なんてパラメータ存在しねえわ。
「絶対、また来てよね! あたし、待ってるから!」
こうして、俺のゲーム大会無双編は幕を閉じた。
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