第4話 帰還といい予感

 スライム4匹がいた場所には、4つの宝石が転がっていた。

 遠目に見ただけではわからなかったけれど、見かけたスライムたちは全員、体内に宝石を埋め込んでいたらしい。


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灰咲はいざき一真かずまLv58

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【STR】132(+1)

【VIT】113(+1)

【DEX】138(+1)

【AGI】121(+1)

【INT】134(+1)

【CHA】111

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・スキル SP:360

【鑑定】

【成長加速】Lv6

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 ステータスが全部+1されてるあたり、各種どこかしらの能力にボーナスが加算される性質でもあるんだろうか。

 だとするともう1種類希少種がいそうだ。


「いや待てよ」


 ふと思い出したことがある。

 それはこの謎の空間にやってくる前に見た気がする、本当にかすかな記憶だ。


「錠前は≪覚醒の宝門アウェイクン・ゲート≫を開いたって表示していたような。宝門? だからジュエリー系の希少スライムしか出現しない?」


 仮説の域は出ないけど、可能性としては十分あり得るんじゃないだろうか。

 まさゆきの地図を偶然手に入れるくらいのラッキーなんじゃね?


「なーんてな。いい年になって幻覚相手に何を真面目に考察してるんだか。それより、ここから脱出する方法を考えようぜ」


 俺はどうやってここに来たっけ?

 錠前を開錠したのがトリガーって線が濃厚か。


「だったら、錠前をロックすればいいんじゃね?」


 物は試しにぐらいの感覚で、開いたままになっていた錠前をカチンとロックする。

 するとすぐさま奇妙な浮遊感に襲われた。


「うあっ、つぅ……この感覚慣れねえな」


 視界がぐにゃっと曲がったかと思うと、次に目を開いた時には見慣れた自室が視界に移りこんでいた。


「戻ってきたんだ。やべっ、もうこんな時間かよ。今から家電屋さんに向かう余裕なんてないぞ」


 不当に差し押さえられたノーパソとカメラを買いに行かないといけなかったのに。


「はあ、また課長にぐちぐち言われるんだろうなぁ」


 明日のことを考えると憂鬱になる。

 言い訳……は考えなくていいか。

 どうせ何を言ったって「うるさい、お前の意見なんて聞いてない」だもんな。

 もう寝てしまおう。

 それが一番だ。



 朝日の気配がして目が覚めた。


「んー、妙に目覚めスッキリだな。……もしかして寝過ごし、てないのか。むしろ目覚ましより1時間早いし」


 スマホに電源を入れて時刻を確認すると、セットしている目覚ましより1時間早い時刻だった。

 はて。

 俺はこんな短い時間で元気をチャージできる体質だっただろうか。


「もしかして、昨日ステータスを上げたからか? ははっ、そんなわけねえか」


 ジェル状のモンスターを倒す妄想だけで生命力VITが上がるなら、すべてのスポーツ選手は瞑想の代わりに妄想をトレーニングに取り入れてるっての。


「ん? 俺の顔ってこんなに整ってたっけ?」


 洗顔している途中、鏡の中の自分と目が合った。

 俺の記憶だと、もう少し不健康にやせこけた頬と目の下の隈が特徴だったはずなんだけど。


(胃腸炎で入院したときに食生活が健康的なものだったから血色良く見えるのかもな)


 まあ、食生活を変えてまで顔立ちを整えようってほどの気力は無い。髭剃りで髭をそって、整髪料で髪を整える。

 素体がしょぼい自覚を持っているからこそ、自分磨きにこれ以上の労力を割くつもりはない。


 さて、だいぶ早いけどぼちぼち出社するか。

 どうせ怒られるんだし、ちょっと早めに出ていい子ちゃんアピールでもしておこうぜ。

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