第2話 奮闘中
俺は恋をした事がない。
自慢じゃないが前世でも同じくだ。
だからアプローチの仕方が分からなかった。
こういった時、乙女ゲームではどうするのがセオリーだっけ、と考えてこっちは攻略される側だったと愕然とする。
なら、普通に攻略されるのを待てばいいのでは?
と思うが、忘れる事なかれ。
乙女ゲームにはライバルキャラがいるのだ。
うかうかしているうちに、そいつらにとられたら元も子もない。
特に隣国のジルフォード王子は強敵だ。
何をやらせても称賛の荒しが降り注ぐ、完璧超人だからな。
俺はすぐさま対抗策を立てた。
選択肢01 フォアナを強引に拉致してお城に。
却下。
「だめだぁ!」
選択肢02 フィアナに怒涛のプレゼント攻撃 ~財力に物を言わせて~
感じ悪い。却下。
「無理だぁ!」
選択肢03 いっそ。あえて。食堂を取り壊す危機をおこして、さっそうと駆け付けるヒーローに!
無理! 心が痛い!
「できるわけねぇ!」
一日かけて思い悩んだが、どれもダメだ。
ロクな作戦が思い浮かばなかった。
何でこんな性格の悪そうなもんしか浮かばないんだ。
乙女ゲームの登場人物の頭で考える者とは思えない。
きっと前世の俺の頭脳の分が、マイナスすぎるんだ。
がっくりとうなだれる俺は、結局地道に彼女に会いに行くくらいしかできなかった。
とりあえず一緒に過ごす時間が多ければ多いほど、人は親近感が湧くらしい。
だからとりあえず日をおかないように、会いにいった。
フィアナはだいたい三回くらいで俺の顔を覚えてくれたようだ。
四回目に俺の名前も覚えてくれたけれど、それってどうなんだろう。
一般的?
それとも好意的?
まだ射程県外?
些細な事でも気になってしまう!
くそっ、相談できる相手がいないのがつらい!
フィアナの食堂は常に満席だ。
多くの人に人気がある店のようだ。
下町の人情味あふれるって感じがいいんだろうな。
しかし、家族経営であるため慢性的に人手不足。
いつも、大変そうだった。
従業員雇わないの?
って思うけど、フィアナの見た目がヒロインしてるから、そういうの目当ての男しか集まらないんだよな。
で、きたらフィアナさん怒る。
だれもこなくなる。
という負の連鎖発生!!
うっ、俺もそういうの目当てだから文句はいえないな。
できるなら手助けしてやりたいけれど、俺が手伝うって言っても警戒されるだろうし。
うーん、どうしたもんかな。
悩んだ末に俺は、城で働いている使用人の顔を思い浮かべた。
翌日、ヒロインの食堂に確かな身元の使用人が一人従業員として増えましたとさ。
お城務めっていうだけあって、信用されるのも早かったな。
でも、お給金に困らないはずの使用人が、なんで下町の食堂なんかに?
ってすっごく、フィアナに不思議がられたみたいだ。
まあ、色々人には事情があるんだよ。
うっかりお城の高い宝物を壊してしまって、その金額を弁償しなくちゃいけないとか。
俺がかばわなかったら、あと一桁は増えていたな。あいつ。
機転を利かせて俺が、目撃者であるその使用人に宝石をプレゼントしたって事でちょっと減らす事ができたけど。
有利な証言ありがとうございました。
でも、そのせいで変な噂が立っちゃって、迷惑かけちゃったんだよな。
俺と使用人ができてるとか。
そんなわけないのにな。
ははは。
うっ、悲しくなってきた。
上手くいってると思ってたんだけど。
問・題・発・生!
まっ、まさか俺が考えたような事をやろうとするやつがいたとはな。
驚きの余り、目をむいたぜ。
突如フィアナの食堂は、高額な土地代を請求されてしまったらしい。
一体なんでだ。当然そう思うよな?
なぜか周辺一体の土地の値段が上がっていてびっくりしたよ。
お城に帰った後、上の兄貴達に聞いてみると、あの食堂の近くの土地を開発するって計画が持ち上がっているらしい。
それで、土地の価値が上がったんだとか。
でもそれをふまても、ヒロインは法外な値段をつきつけられていた気がするけど。
どう考えても金額が、桁がおかしい。
困ったな。
ここは王子様の権力を使ってでも注意すべきだろうか。
けれど、なんかそうやって解決すると恩人から恋の相手に昇格するまで時間かかりそうだし。
うかうか遠回りしてると、他の奴らが(略)。
ここは別の人に解決してもらった方がよさそうだ。
というわけで、強面の騎士を用心棒として紹介する事にした。
色々あってそいつもお金が必要なんだよね。
故郷の村おこしのために、お城で騎士やってるけど、近年になって廃れ具合が増してきているらしい。
それで、もっと職を増やしたいとか。
激務にならないか?
頑張れよ!
俺は応援する事しかできないけど。
その用心棒も、、フィアナ達は歓迎してくれたけど、やっぱり訝しがられたな。
なんでお城の人間がまた、って。
うん、まあそう言う事もあるよ。
世の中には、ねっ。
そういうわけだから、無理な土地代を要求してくる奴らは、強面の用心棒に脅してもらった。
それでオハナシもすませて、修整額が変わった。以前よりは、常識の範囲内の金額におさまったようだ。
今さらだけど、俺ぜんぜん活躍してないな。
人、紹介してるだけ。
これってどうなの?
俺、フィアナに近づけてなくない?
皆にどんどん、手柄がとられてくよ。
今度こそ俺自身の力でフィアナにアピールしないと。
そう思ったら、さっそくチャンスがきたみたいだ。
もうじき一年に一度の、王都の祭りがおこなわれる。
その際、国の大通りに様々な店が出店を出すんだけど、フィアナの店も出店する事になっている。
そういった時には、お店の人は多くのボランティアの手を借りていい事になっている。
だから俺は気兼ねなくフィアナの手伝いができるのだ。
おし!
これを機にぐっと仲を深めよう。
と、そう思っていたのだが。
出店が並んだ大通りに、お祭り開始の旗を立てる前。材料が届かないという前代未聞の事故が発生。
今までにそんな事、おきなかったのに。
なぜ!
今回になって起きるんだよ!
コッチの世界は、元の世界のように冷蔵庫とかクーラーボックスとかがないから、大量の生物の食材を扱う時は大変なんだよな。
一日分の食材をその日調達して、その日に使用しなくちゃいけない。
このままだと、材料がとどかなくて出店があけられないかもしれないな。
仕方ないから俺は、日ごろからお世話をしていた愛馬ジョセフィーヌにまたがって、街道の様子を見にいくことに。
すると、材料を乗せた馬車が立ち往生しているのが見つかった。
どうやら、御者が病気で具合が悪くなってしまったらしい。
俺はかわりに御者を務める事にした。
こんな時のために、王子教育で馬の扱いを学んでいてよかった。
乗馬訓練と馬車をひく馬の違いは分からないけれど、気合があれば何とかなる。
俺は馬を操って、できるだけ急ぐことにした。
「おろろろろろ」
あれだね。
詳しくは言えないけど、グロッキーです。
一人で乗る馬と、荷物を引く馬って色々違うんだね。
無理な挙動はあかん。
急旋回すると荷物の重みで馬車が傾いてまう。
いつもと違う御者に混乱した馬が右往左往して危なかった。
けれど、何とか間に合ったみたいだ。
出店の店主たちに感謝された。
当然フィアナにも。
ああ、やっと自分で役に立てた!
力尽きたので俺はその後、ただの屍になってしまった。
フィアナが作った出店の料理を味わいたかったのに、もったいない。
はぁ、しかしヒロインとの出会いからやく半年くらい経過したけど、未だに役に立った回数が一回ってどうなんだ?
先は長そうだな。
好感度もっと上げていかないと。
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