【コント】すぐ読めてすぐ笑える短編
水ManJu
第1話
俺は家電量販店の携帯電話売り場に来ていた。
「へぇこれが最新機種か」俺はスマホのモックアップを手に取り眺める。
「はい。いらっしゃいませ。ご注文承ります」店員は俺に聞いた。
「このスマホの最新機種が欲しいんですよ。ありますか?」俺はスマホのモックアップを手にしながら言う。
「ございます。ご一緒にポテトもいかがですか?」店員がポテトを勧めてきた。
「いや、ここマクドナルドかよ! なんだよポテトって」俺は言う。
「あっ! すいません。スマホを買いに来たんですね。お客様がポテトを欲しそうな顔をしてたのでてっきり」店員は舌をだしながら言う。
「ポテト欲しそうな顔ってなんだよ。ふざけてんのか!」俺は言う。すると店員は「プッ」っと俺の顔を見て吹き出した。
「おう。なんだよ。なにかおかしいか?」俺は言う。
「すいません。お客さんってお笑い芸人の方ですか?」店員は言う。
「オメーだろうが! お笑い芸人は! 俺は普通の客だわ。普通にスマホを買いに来たの!」俺は叫んだ。
「あっ! スマホ? ひょっとしてスマホってスマーフォンのことですか?」店員は聞く。
「スマーフォンってなんだよ! 略し方おかしいだろ! スマートのトぐらい言えよ! トぐらい」俺は言った。
「でも、お客さんスマホも略し方おかしいですよ。スマートフォンなのになんでスマホなんですか。正確に言うならスマフォですよね。なんでフォがホになるんですか」店員は言う。
「そんなのどうだっていいだろうが! なんでそこにこだわるんだよ!」俺は突っ込む。
「いや、ここは譲れないっすね。やっぱ日本語大事にしないと」と店員は言った。……俺はなにも言えない。
「いや、だから俺はスマホを探しに来たんだよ! なにか良いやつないのかよ!」俺は叫んだ。
「あっ! それでしたらこちらがオススメですね。折りたたみ出来ないスマホ」
「折りたたみ出来ないスマホってそれ普通のスマホだろうが! 折り畳めるんだから凄いんだろうが!」俺は汗だくになりながら突っ込んだ。
「お客さん凄い汗ですよ。なんでそんなに興奮してるんですか?」店員は言う。
「お前が変なこと言うからだろうが!」俺は突っ込む。
「汗をお拭きしますよ」と言いながら店員はタオルを俺で俺の汗を拭こうとしてくる。
「いや、いいよ。そんなの」俺は拒否した。
「いやいや」と言いながら店員は俺の隣にいた汗だくの親父の汗を拭いた。
「いや誰だよ! この親父は!」俺は突っ込む。
「なんでいつの間に俺の横に……てか汗かきすぎだろ! この親父!」俺は店員に汗を拭かれている親父に向かって言う。
「大丈夫ですか?」店員は言う。
「はい……」汗を拭かれながら親父は言った。
店員はその親父の汗を拭いたタオルで俺の汗を拭こうとする。
「いや、それで拭くんじゃねぇよ!」俺はのけぞりながら言う。
「お客さん。これもオススメですよ。スマホの画面って汚れやすいんですよね。で、これでキレイにしてください」と言いながら店員はウエットティッシュのようなものを見せてきた。
「あ! 聞いたことあるスマホの画面って汚れてるんだって。へーこれで画面を拭いてキレイにするんだな」俺はウエットティッシュのようなものを手に取り関心そうに言う。
「いや、それはポテトチップスを食べたあとの手を拭くためのものですけど」店員が言う。
「それただのウエットティッシュじゃねぇか!」店員に俺は言う。
「なんでスマホ売り場にあるんだよ。ウエットティッシュが!」俺は呆れたように言う。
「いや、違うんですよ。お客さん。これはポテトチップス専用のお手拭きで、これはフライドポテト専用のお手拭きで……」
「それどっちも一緒だろ! どっちも一緒の油分だろ!」俺は突っ込む。
「あとこれはポテトチップスを食べる時専用の手を汚さないお箸です」店員が箸を俺に見せながら言う。
「じゃあいらねーじゃねぇか! ポテトチップス専用のウエットティッシュ! 箸があるんなら箸使えよ!」俺は言う。
「いや、それはポテトチップス食べる人の自由だと思いますけどねぇ」店員が俺に言った。
「だから何の話なんだよ! さっきから!」俺は怒鳴る。
「ポテトチップスの話でしょ?」店員が聞く。
「いや、スマホを買いに来たんだよ!」俺は言う。
「あ! はい分かりました。スマホですね。じゃあこれで」と言いながら店員はポテトチップス専用のウエットティッシュで手を拭いたあとスマホを触る。
「いや、さっきお前ポテトチップス食べたのかよ! 専用お手拭きで手を拭いてんじゃねぇよ」
「いや、まままま」と言いながら店員は手を拭いたウエットティッシュで口を拭いた。
「いや、なんだよきたねーなぁお前」俺は突っ込みを入れる。
「このスマホ自動でロックがかかるタイプなんですよ」店員が言う。
「あぁなるほどね。他の人に見られないためにね。スマホは個人情報の塊だからな」俺が言うとスマホからロックンロールの音楽がかかってきた。
「いや、自動でロックがかかってどうするんだよ! 意味不明だわ」俺は突っ込む。
「いや、でも意味わかんなくてもいい曲だって分かりますよね」店員が言う。
「だからそういう話じゃねーんだよ!」俺は突っ込む。
「あーもう!」俺は怒り狂って地団駄を踏んだ。するとスマホがピコン! と反応する。それに気づいた俺は
「え? なにこれ勝手に撮ってる?」店員に聞く。
「あぁこのスマホ、町中にいるちょっとアレな人を検知して動画を撮って自動でSNSに上げる機能があるんです」
「ふざけんじゃねぇ! なんだよその機能! 怖すぎだろ」俺はまた怒り狂って地団駄を踏む。ピコン! またスマホが反応する。
「あぁ。またスマホが反応した。消してくれ! データを!」俺は叫ぶ。
「あ、はい分かりましたぁ」と言いながら店員はスマホを操作する。
「あっ! 消しましたけど、お客さんの動画拡散されてますね。元動画消したんですけど、お客さんの地団駄に合わせて曲を入れたMADがちょっとバズってますね」店員が言う。
「怖すぎだろインターネット! もう一生ネットできねーわ!」俺は叫ぶ。
「じゃあなんでスマホを買いに来たんですか?」店員が言う。
「お前が言うんじゃねぇよ!」俺は突っ込んだ。
「ハァハァ」と俺は息を整える。店員はなんだか呆れたように俺を見ている。
「ご希望のスマホのスペックとかありますか?」店員は聞く。
「まぁそうだなぁ。カメラの性能が良いやつ欲しいんだよな。ちゃんとズームも出来て、シャッターチャンスを逃さないやつ」俺は言った。
「すいません。それだったら、ちゃんとしたカメラを買われた方がいいんじゃないですか?」店員が聞く。
「いや、だからカメラを買いに来たんだろ!」
「え? 今カメラを買いに来たって」店員は言う。
「いや、違う。いい間違えだ。スマホを買いに来たんだよ!」俺は言う。
「あぁスマホなら通販の方が安いですよ」
「じゃあなんで店頭販売してるんだよ!」そう言いながら耐えきれなくなった俺は店を出た。
【コント】すぐ読めてすぐ笑える短編 水ManJu @mizumanjuu
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