ドラゴン襲来ー④
飛び上がられては不利になってしまうと焦るフリックは、脚部3連装ミサイルをゴーレム戦で使った方の足から残りの2発を発射する。
しかしミサイルはドラゴンの羽ばたきの風圧に負け、あらぬ方向へと飛んでしまい結局ドラゴンに上空へと舞い上がる事を許してしまう。
そこからはドラゴンによる一方的な攻撃が始まった。
口から吐く強烈な火、もといビーム攻撃の連射による絨毯爆撃により周囲の地形は焦土と化し、美しかった緑の草原は見る影もなくなってしまう。
フリックは巧みな操縦で何とかギリギリ全てを交わしてはいるが、何発かは完璧には避けきれず、掠めてしまったせいで徐々に装甲にダメージが蓄積していく。
隙を見てライフルで反撃しようとはするのだが、避けるのに精一杯で照準を上手く合わせられず、銃口から放たれたビームがドラゴンに当たることは無かった。
「どれだけ撃ってくる気だ! 奴のエネルギーは無尽蔵なのか!」
「捕獲して連れ帰れば人類の夢、永久機関が作れそうですね。……捕獲しますか?」
「奴を捕獲するんだったらSAを大隊規模で集めないと無理だ!」
フェアリーと言い合いながらも攻撃を躱し続け、合間に効果は無いと分かりつつ牽制射撃をフリックは放つ。
こうして互いに決定打に欠ける壮絶な撃ち合いは暫く続いたのだが、突然ドラゴンは口を閉じ、激しく翼を羽ばたかせると高度を上げだした。
「アイツこのままここから逃げ出す気か!」
慌ててフリックはライフルを連射するが、巨体の割りに軽快な動きで躱すドラゴンに一発も当たる事は無かった。
「いえ、そうではないです軍曹。どうやらドラゴンは痺れを切らしたのでしょう。この決着のつかない撃ち合いを終わらせる気の様ですよ」
ドラゴンは上昇を続けながら体内にエネルギーを蓄積している事にフェアリーは気づいたのだ。
そのエネルギー量は今まで相対してきた同じエネルギーを操る人間達とは比較にならず、全てを使ってさっきまでと同じ様にビームを放たれれば避けるなどという次元ではなく、半径数十キロは壊滅的な被害を受ける威力が出ると算出した事をフェアリーから報告されたフリックは青ざめる。
「それだと村も範囲内じゃないか! どうにかして奴を止めないと! 何か策は無いのか!」
村だけの話では無く、避難しているレッカ達は病人や怪我人、年寄り子供まで抱えての移動なのだ。
当然歩みは遅く、恐らくまだ村から左程離れていない地点までにしか進めていないに違いない。
なのにこの場で何も出来ずにただ手を拱いているなどフリックには耐えられないのだ。
「成功するかは五分五分の賭けになりますがよろしいですか?」
「十分だ。このままただ奴がエネルギーを蓄えるのを見ているよりはな」
「了解しました。作戦内容は至ってシンプルです。軍曹、どうしてこの世界に飛ばされてしまったか覚えてらっしゃいますか?」
フリック達がこの世界に来た原因はワームホールに吸い込まれたからだ。
そしてそのワームホールが発生した原因は、最大威力の反粒子ライフルから放たれたビームと敵戦艦の主砲からの攻撃がぶつかり合った事。
「そういう事か。フェアリー、ライフルに全エネルギーを回せ!」
「了解しました。反粒子ライフルへのエネルギー急速充填を開始します」
ドラゴンと反粒子ライフル、それぞれが限界にまでエネルギーを蓄え終えたのは同時であった。
世界最強の生物と、人類の英知が生み出した鋼鉄の巨人は暫しの間睨み合う。
しかし直ぐにその時は訪れた。
今まで一番大きな咆哮を上げたドラゴンは、口から先程までとは比べ物にならない程の太いビームを放った。
フリックもそれに合わせてトリガーを引き、ライフルから光の奔流を放つ。
攻撃はドラゴンとエアレーザーの丁度中間の位置でぶつかり合い、激しい閃光を放ちながら弾け、互いに互いを消し去り合った。
「フェアリー! ミサイルを奴の翼の飛膜にロックして全弾発射しろ!」
対消滅の余波で揺さぶられるエアレーザーを無理やり安定させようと操縦桿を固く握るフリックの叫びを聞いたフェアリーは、瞬時に指示通りに狙いを定めて残っているミサイル3発全てを発射する。
ミサイルは余波の影響を受けてしまい本来の速度は出なかったものの、閃光で視界を奪われた事でミサイルの接近に気づかなかったドラゴンに避けられる訳がなく、狙い通りに翼の飛膜を捉えた。
流石に飛膜は鱗程強度がなかったらしく、ミサイルが命中した事で大穴が空いた。
結果、上手く空気の流れを作り出せなくなり揚力を失ったドラゴンは、何故自分が落ちていくのか理解できずに無意味に翼を羽ばたかせながら急降下を始め、そのまま大きな土埃と共に地面に激突した。
「……やったのか。フェアリー、奴を探知できるか?」
「ダメです。対消滅の影響でセンター類が使えなくなっています。おまけに土埃で視認性も極端に悪くなっているのでドラゴンの姿を捉えられません」
死体を確認できていないとはいえ、あの高度から落ちて生きている生物はいないだろうとフリックの心に隙が生まれた瞬間、エアレーザーは土埃を吹き飛ばしながら飛び掛かって来たドラゴンに地面に押し倒される。
「こいつ! まだ生きているのか!」
ドラゴンはそのまま残った三本の足でエアレーザーを押さえつけると、大きく口を開けてビームを放つ体勢に入った。
絶体絶命。
だが、フリックは諦めない。
愛する人の元へ、レッカの元へと生きて帰る為に。
「今度こそ終わりだ!」
素早く試作型帯電ナックルガードを展開させたエアレーザーの手をドラゴンの口に突っ込ませたフリックは、ナックルガードの電圧を最大にまで上げた。
バチバチと電流が弾ける音共にドラゴンの頭部から煙が上がり、白目をむきながらドラゴンはエアレーザーの上にゆっくりと倒れこんだ。
いくらドラゴンがどんな武器も通用しないと言う鱗を持っていても、体内から直接電気で脳を焼かれてしまえば無意味だったのだ。
「センサー類機能回復。ドラゴンの生命活動停止を確認。我々は竜殺しの英雄になったようですよ、軍曹」
「生きてレッカの元へ帰れるのなら何でもいいさ」
操縦桿から手を放し、ヘルメットを脱ぎ捨てたフリックは大きく息を吐きだしながら、激しい戦闘からの解放感と生きている喜びで体を脱力させる。
「……軍曹、上空に異常を探知! この反応は間違いありません。ワームホールが開きます!」
フェアリーが報告し終えるのと同時に、エアレーザーのカメラアイが上空に現れた空間の穴を捉えた。
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