終わらない八月

 花火大会も忘れてない、もちろん行った。

 みんなで、


『たまや~!!!』


と叫んだ。

 意味は、やっぱり知らない。


 バイトは夏凪と昼寝が嫌がったので、やらなかった。


「なんで探偵がアルバイトしなくちゃいけないのよ?」

「どうして探偵の妹が、時給で働かないといけないのだい?」

「こういう時だけ息ぴったりだな」


 ちなみにお嬢様の斎川は、意外に乗り気だったことを付け加えておく。

 シャルは興味なさそうだった。


 夏季合宿も時間の都合、もう八月下旬が近づいていたので、他のイベントを優先するためパスとなった。


「あとは天体観測と肝試しだね……」

「絶対お前、涼宮ハ〇ヒ読んだことあるだろ」


 エンド〇スエイト参考にしただろう。


 もちろん両方ともこなした。


                   *


 夏で、夏休みだった。


「まさかお前が宇宙人、未来人、超能力者のどれか、というオチか?」

「オチとはなんだい、失礼な。まあ真面目に答えるなら、超能力者が一番ハードルが低いね……」

「真面目に答えられると、逆に怖いんだが……」


 SPESスペースの人造人間だったら、マジで洒落しゃれにならないぞ。


「…………………」

「おい。おい黙るな、否定してくれ」

「私が『違う』と言って、あなたたちは素直に信じる?」

「…………………」

「そういうことだよ」


 何度目かの遊びの帰り道に、それとなく聞いてみた。


「どうだ、俺たちの遺産としての評価は?」


 内心おっかなびっくりだがな。


「まあいいんじゃない? 合格点をあげるよ」

「おい」


 本当にそんなに適当でいいのか……。


「本当についでなんだもの。この時間の方が大事」


 この時間が、そこまで輝いているというなら、よっほど「特殊な境遇」だったのかね。

 シャルの仲間の「身辺調査」は、そろそろ何か結果を出していてもいい頃だが……。


                 *


 一緒に過ごして約三週間。

 自宅の俺の部屋まで侵入されたのは、ほぼ毎日。(半分以上、斎川ももれなくついてきた)


 これだけ時間があれば、俺たちの命を狙うなど造作ぞうさもないこと。

 それをしなかったなら、違う、のだろう。

 ヒルネは俺たちの敵じゃない。


 そう思っていたんだがな……。


 こうして俺たちの現実は、物語のような急転直下きゅうてんちょっかの展開を迎えることになる。


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