Sleeping Beauty

 姿をそっくりにするくらい、お姉ちゃん大好き妹だったから、てっきりシエスタと同じ墓に入りたいのだろうと思っていたら、


 ヒルネは顔もおぼえていない、祖父母の墓に収まった。


 これが最後のお願いの


 たくっ。

 最後に一つとか言ったくせに、二つとか。

 自分の言葉に責任を持てってんだ。


 お墓に四人で手を合わせながら、心中でのみ文句を言わしてもらう。


 それで最後の本当の一つというのは、


『私のことをどうか、忘れないで欲しい』


 だとさ。

 こましゃくれたあいつにしては、可愛かわいらしいお願いじゃないか。


…………おぼえてるよ。

 夏凪が、斎川が、シャルが、俺が、お前を憶えてる。

 たとえ俺たちが、これからの「戦い」で力尽きようとも、知り合いのまた知り合いへと、絶対に語り継いでゆく。

 手始めに、俺は高校の友達から……。


 悪い、いなかった……。


………………。

 だ、だったら、さっそく友達第一号を今日作ってやるから、空から見てろ……!

…………ああ、の「「バカか、君は」」というなじりが、今にも聞こえてきそうだ。

 

「「君にまともな友達なんて、作れるはずないだろう?」」


 上等だ。

 せいぜいそうして、え面をかいているがいいさ……。

 俺だって。俺にだって、友達の一人や二人ぐらい……!

 作れる、よな……?

 


 探偵の妹はもう、死んでいる。

 

 でも、名探偵シエスタの遺産の中で、彼女は生き続ける。


                              (了)

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