第17話:兄弟喧嘩2

「まったく、勝手に出て行きやがって探したぞ」

「べ、別に探して欲しいなんて頼んでません!」


 ウソです。迷子になっておりました。


「それで、何してたんだよ?」

「お、お仕事ですぅ!」

「仕事がないって騒いでいたヤツがぁ?」

「い、いいでしょ! 別に……」


 ああん、もう! 

 こうなるのが分かっているから面倒なんだよ!


 そんなくだらない口喧嘩をしているうちに、金髪王子は意にも介さずこの場から去ろうとしているご様子……ん?


 あれ? なぜか私と目が合ってしまいましたけど……。


「そうか、君は、あの闘技場の……」


 あぁぁぁ! それ以上は思い出して頂かなくて結構です!


「ああ、居たのか。ザイル」

「気安く呼ぶなよ、アルマ」


 えっ!? いきなり険悪モードですか。

 二人とも王子ってことは、兄弟ってことでしょう? もうちょっと、仲良く……。


「忌まわしき呪い持ちめ、暴れるしか能がない野蛮人が」

「戦場に出たこともないひよっ子が、一端いっぱしに吠えるじゃねぇか」


 ああ、こりゃダメそうだ……。


 兄弟って言っても、王族は王座を奪い合うライバルみたいなものだ。それに、呪いの忌み子として扱われ続けてきたアルマに対して、お互いが長年培ってきた接し方の結果なんだコレは。


「それにしても、今日はやけに絡んでくるじゃねぇか」

「……貴様には関係ない」


 そうして、またザイルと目が合った。


 ん? 私の顔に何かついてますかねぇ?

 ――ゴシゴシっと!


 そんなザイルの様子から、アルマは何かに気付いた様だ。


「残念だが、は俺のだ」


 えっと、『アレ』って、なんでしょうか?


「貴様、何でも勝手が通ると思うなよ!!」


 そうしてザイルの手が腰にあった剣へと伸びるのを見て、それは流石にやり過ぎだと思った時には、身体が動いていた。


「ス、ストーップ!! 一旦、落ち着こう!」


 ああ、一触即発の二人の間に挟まれるとは……。

 しかも、片方は剣まで抜こうとしてるし。


「……お前、アルマとどんな関係だ?」

「どんなって、別に……」


 私が死ぬとアルマも死んじゃう関係……。

 あれ? 結構、関係深くない? 


「裸を見せあった仲だ」

「ちょっとアンタ!! 何言ってんの!?」


 そんなサラッと、誤解を招くようなこと言うな!


 あっ、あの、シアさん?

 ハッとして顔を真っ赤にしてますけど、思っているようなことはしてないです! 絶対!


「お、お風呂上がりに出くわしただけでしょうが!」


 ここはハッキリと言わせてもらいますが、本当に見てないから!


 え? どこがって? 言えるかぁ!!


「そうか、分かった……」


 そう言って、ザイルは剣から手を離した。


 この状況で、何が分かったの?

 私のほうが分からないんですけど……。


「アルマ、貴様と決着をつけてやる」

「あぁ!? まぁ、まどろっこしいよりはいいか。面白い!」


 どうしたら、そんな結論になるの!?

 あぁ、やっぱり止めといたほうがいいか。


「いや、だから……」

「お前ら、こんなところで何してんだ?」


 そこに現れる、見知った二人組。


「あ、シドハル! なんとかしてよ!」

「変なコンビ名みたいに呼ばないでくれよ……」

「なんとかと言われましても、どういった状況でしょう?」


 まぁ、そうだよね。私だって分からないもん。


 睨み合う王子をそっちのけで、二人に状況を説明し終えると、予想外の流れが待っていた。


「なんだよ! もっと早く言えよ!」

「闘技場の予定を確認しておきましょう」


 ハルさんはそう言い残すと、さっさとこの場を離れて行く。残ったシドさんも全く二人を止める気配がない。


「え? 止めてくれるんじゃないの!?」

「こんな面白そうなことに水を差すなんて、勿体無いじゃん!」


 もう好きにして下さい……。

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