第15話:王宮のお仕事3

 アルマの部屋から退散して、今は王宮の中を散策中です。顔は真っ赤なままなんですが。


 あぁ〜、何をやっているんだ私は……。

 きっと、アイツは私を助けようとして勧めてくれただけなんだろう。


 一人で過剰に意識してんのかなぁ。私。


「あれ? ……ここは、どこだろう?」


 しまった! 考え事をしながらフラフラしていたら、全然知らないところに来てしまった。


 王宮って同じような場所がいくつもあるし、迷路みたいになってて分かりにくいんだよねぇ。


 ど、どうしよう……。


 そんな中で、ふと目に入ったのは無造作に咲いた花の花壇だ。


「あれ? この花壇、手入れされてないのかな?」


 今まで見てきた王宮の中庭や花壇は、一流の庭師が手間も時間も惜しげもなく費やしました! って、感じだったのに。


「あっ、これとかちゃんと植え替えてあげないと」


 放置されてたせいか、バランスが悪くなって育ちが悪くなってそうだ。


 私だって、伊達に田舎で畑仕事をしていた訳ではないのだ。庭師さんの足元にも及ばないけど、多少の知識はある。


「……勝手にイジったら怒られるかなぁ」


 しかし、一度気付いてしまったら気になって仕方がない。幸いにも庭仕事の道具は近くに用意されているご様子。


 それに、今は無心になれる仕事がしたい。


「よし! やってるか!」


※※※


「こんなもんかなぁ〜」


 グッと、伸びをしながら花壇の出来栄えを確認する。


 うん! 大分良くなったんではないですかね!


 植え替えのついでに草むしりもサービスしておきました。私は、大変満足しましたよ。


「さてと……」


 満足はしたけど、残念なことに問題は何も解決してないんだよなぁ。


「誰だ!!」


 そんな呑気なことを考えていたら、いきなり大声で怒鳴られて思わず肩が震えてしまう。


 あ、もしかして、この花壇の関係者の人かも。

 やっぱり、勝手にイジっちゃまずかった? 


「侍女か? ここには勝手に入るなと言ってあっただろが!」


 マズい!

 絶対にイジっちゃダメなやつだったみたいです。


「これは、お前がやったのか?」

「……は、はい」

「お前、何とも無いのか?」

「はい? ええっと、はい。何とも……」


 え? 本当に何ともないんですが……。

 ま、まさか、触ったら危険な花だった!?


「……こっちを向け」


 はいはい。向きまーす。

 まったく、こんな扱い何度目かってんだ!


 いい加減慣れて来ちゃうぞ?


 そうして向き合った先には、綺麗な金髪の男の人が立っていた。


「お前、どこかで見た顔だな?」

「ひ、人違いじゃないですか……」


 少なくとも、私はアナタを知りませんし……。

 でも、雰囲気が誰かと似てるんだよねぇ。


「ここの花に触れて平気とは」

「き、危険なものなんですか?」

「ああ。最悪、命を落とす」

「い、命⁉」


 えぇ⁉ 超がつく程の危険物じゃないか!!

 何でそんなものが王宮の中にあるんだぁぁぁ!


 え、なに? これ私、死ぬの?


「心配無い。影響があれば、既に死んでいる」


 サラッと言うよね、そういう事……。


「な、何なんですか? その花って」

「ああ、巫女の花と言う」

「巫女?」

「そうだ。コイツは適性の無いヤツが触れると、そいつの気力を吸い尽くす。気絶で済めば良い方だ」


 え、怖っ! だから、放置されてたのか。


「まさか、ここまでしても無事とはな。以前、この花に触れて平気だったのは、母くらいだったのだが……」


 そう言いながら近づいて来た男の手が、私の顔に伸ばされる。


「お前、名は?」

「エ、エナです」

「エナ……」


 伸ばされた手は、私の頬に触れるか触れないかのギリギリのところで止まった。


 な、何よ……、こっちの心臓はドッキドキなんだぞ!

 こ、こんなこと、イケメンにしか許されないんだぞ!


「……まさか、な」


 そう言うと、頬に伸ばされた手はスッと引かれていった。


「去るが良い。侍女が居るようなところでは無い」

「そ、そのことなんですけど、ちょっとお願いが……」


 そして、突然現れた金髪イケメンに、残念なお願いをする羽目になったのだった。

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