第12話:最低な解決策3

「コイツが純潔じゃなければいいんだろ?」


 アルマの解決策に、この場の空気が固まる。


 ア然とする私達をよそに、こんなことにも気付かないのかと、不思議そうな目で周囲を見ている痛い子が一人。


 あ〜ぁ、シドさんもハルさんも、流石に顔が引きつってるじゃないかぁ。


「何だよ? 俺、間違ったこと言ったか?」

「……バカで気が利かないって、本当なんですね」

「ま、まぁな……。アハハ、ハァ……」


 シドさんが可哀想じゃないか!

 もう喋らないでよ、バカ王子!!


「ウム。流石に思い付きませんでしたが、案外悪くない案かも知れませんねぇ……」

「だろ?」


 えぇぇぇ⁉ ここに来ての伏兵がァァァ!


「おい、ハル! 流石に悪ノリが過ぎるぞ」

「しかし、彼女の純潔が失われれば、生贄としての利用価値がなくなる可能性は大いにあります。試してみる価値はありますよ」


 た、試すってなんだぁ?!

 私のこと、何だと思ってるんだァァァ!!


「では、我々はお邪魔でしょうから退散しましょうか、シド」

「「え?」」


 思わずアルマと声がハモってしまう。

 いや、ハルさん! それは、その、つまり?


「では、アルマ。良い夜を……」

「「ちょ、ちょっと、待てぇぇい⁉」」


 あら、また。でも、このツッコみは譲れない!


「なッ、な、なんで、がコイツなんかと!?」

「なッ、な、なんで、がコイツなんかと⁉」


※※※


「まぁまぁ、お二人とも落ち着いて……」

「こ、これが落ち着いていられるかぁ⁉ な、何で俺がこんなヤツと……」


 おい! こんなヤツとはなんだぁ!?


「貴方が、闘技場から連れて来たのではないですか? それも、あんな公衆の面前で堂々と」

「そ、それは……」


 あッ! アルマのヤツ困ってる。困ってる!

 それはそうと、私もきっぱりと言っておかねば。


「私だって、こ、困ります!!」

「彼はこう見えて王子です。貴女に断る権利はないと思うのですが……」


 んなッ、理不尽な⁉


「それとも、心に決めた方がいらっしゃるとか?」

「い、いえ。それは、別に……」

「では、問題ないですね」


 問題だらけだっての‼


「あぁぁぁ!! やめだ、やめ!」


 私達の退路を潰して来るハルさんに、堪らずアルマがストップを掛けた。


 正直助かったよ。あのまま行ったら流されて……、流されて……、って、なんでもない!


「貴方の案ですよ? それに、別に命を取る訳ではありませんが」

「そう言う事じゃねぇんだよ!」


 アルマも、自分の出した提案でここまで追い詰められると思ってなかったみたいだ。


 ざまぁみろ!


「では、どうするのですか? 放置してしまえば、本当に生贄にされてしまいますよ?」

「……しょうがねぇ。しばらくはウチで面倒見るしかねぇか」


 うん? それってどう言う……。


「とりあえず、俺の側室にでもなったってことにしておくか?」

「そ、側室⁉」


 そ、それって、つまり奥さんってことでしょう?!

 冗談じゃない! 却下! 却下!


「何だよ、問題あるのか?」

「ある! 問題大アリ!!」

「じゃぁ、どうすりゃいいんだよ……」


 どうすりゃいいと聞かれても、そんなにパッと思いつくもんじゃ……。


 いや、待って。ここに来てから散々お世話になった、あの服装が頭をよぎる。


 働かざる者食うべからずって言うし、ここは。


「私、王宮ここでメイドとして働きます!」


 こうして、私の望まぬ王宮ライフが始まった。

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