第10話:最低な解決策1

 アルマの部屋に連れ込まれると、私はベッドに放り込まれた。


「さて、どうするか」


 ど、どうするかってなに⁉

 半裸の私をベッドに放り込むって、つまり、その、つまり⁉


「とりあえず、こんなもんで我慢してくれ」


 そう言って、今度は何着かの服が放り込まれてきた。


 あれ? 想像してたのと違って紳士な対応。

 いや、良いんですよ? 良いんです、けど……


「早く着替えろよ! 目のやり場に困るだろが」


 その反応は動揺してるのかな?

 可愛いとこあるじゃん。私に余裕があればイタズラしちゃうかも……


 やめやめ、何言ってんだ。

 そんなことして、押し倒されたらどうするんだ。


 あ、あれ? 私も顔が火照って来てる⁉


「あ、ありがとうございます……」


 そうして投げ込まれた服の中から、適当な物を選んで着替える。


「あぁ、悪い。少し外すぞ」


 そう言って、アルマは部屋を出て行った。

 着替えを覗くつもりはなかったらしい。


 服は全部が男物で、私のサイズより少し大きい。

 シャツとズボンを適当に選んで着ると、裾を折って丈を合わせる。


 にしても、肌触りで分かる。これ、絶対高いヤツだ……。


 私がちょうど着替え終わった頃だ。


「……で、お前が強奪した娘ってのはどこだ?」

「お、おい! シド!」

「私も見定めて置かねば成りませんので」

「ハルまで……」


 扉の外で何やら揉めているご様子。

 と、思っていたら、勢い良く部屋の扉が開かれた。


「あッ、いたいた! へぇ~、なかなか可愛いじゃん」

「あ、ありがとう……、ございます?」


 あ、あの、それで、いきなり入って来たこの方は誰なんでしょう?

 

「おい、アルマ! もう抱いちまったのか?」


 な、なぁッ?!


「な、何言ってやがる!!」


 私よりアルマの反応の方が早かった。

 アルマの顔、真っ赤!

 ……私の顔は、見ないで下さい。


「お前、本当に女に奥手だよなぁ。あんだけ派手に持って帰って来といてよ〜」

「う、うるせえ! ほっとけ!」


 仲がいいな、この二人。

 それもそうですが、さっきから私のことをまじまじと観察している後ろの人も気になるんですが。


「それで、この娘が例の?」

「ああ、コイツの前だと本来の力が出せないんだ」

「なるほど。とりあえず、ひん剥いて調べて見ますか……」


 おぉッと!! 今の私に近づいてみろぉ!

 全力の大声で、耳キーンってさせてやるから! 


 ……誰か助けてください。お願いします。


「お前ら、悪ノリしすぎだ」

「あぁ、悪い悪い。お前のその顔見てたら、からかい甲斐があり過ぎてよぉ」

「ったく……」


 あ〜のぅ、ずいぶんと蚊帳の外なんですけど、この人達誰ですか?


「あぁ、紹介が遅れたな。コイツらは、シドとハルって言うんだ。こんなんだが、うちの武官と文官なんだ」


 は、はぁ。

 あ、あの、大変失礼ですが、一般人の私にこの人たちがどれ位偉いか教えて頂けませんか?


「武官は軍事のトップ。文官は軍事以外の事務、技官のトップです。要するに、この国の軍で上から三人がここにいます」

「誰に説明してんだ? ハル」

「『説明して欲しい!』と、お顔に書いてありましたので」


 うわぁ⁉ そんなに、分かりやすく顔に書いてしまいましたか!

 後で、念入りに顔を洗っておかねば!


 こっちの説明してくれた人がハルさん。部屋に入って来るなり、問題発言してくれたのがシドさんね。


 って、この二人めちゃくちゃ偉い人達だった……。


「安心してくれ。俺がこの国で最も信頼してる二人だ。……俺への礼節はねぇけどな」

「満更でもないくせに照れんなよぉ!」

「……ほらな」


 ほんとに仲がいいなぁ、シドさんとアルマ。


「それじゃ、そろそろ聞かせてもらおうか。お前が何者で、なぜ王宮に連れて来られたのか」


 アルマからの問に、私はここまでの出来事を話すことにした。

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