第8話 最強チートをテストする!
目の前に現れた自分のステータスを見たレオ。
(な、なんだ、これは? まるで2世代前の
(それは人間の皮膚なんてワニのウロコじゃないので強化しようがないし、カッコよさというのは… まあ、それはせいぜい自分で努力して上げるしかないわね)
“まあ、そう言われればそうか。でもコレ、マジ、DKの設定じゃん!”
と心の中でブツブツ言いながら出口に向かって歩きだすと
「いいかい。より道しないでちゃーんと届けるんだよ」
と背中から言われた。
これって、あのDK7のお母さんのセリフそのものじゃん…
家から出ると、眼前には白い浜辺が広がっていて、透明な波が静かに寄せたり引いたりしていた。
浜には小さな木舟が4、5艘あり、杭に繋がれて打ち寄せる波でゆっくり上下していた。
右手の方には岬らしい岩場がずっと先まで伸びている。
その先には岩だらけの岬があり、反対側の左手には大きな屋敷と建物があり、港があるらしく船が停泊している。
そして...
どこからか、あの懐かしいゲームのBGMが流れてくるようで、胸がしまり鼻の奥がキュッとして、思わずアルブミンやグロブリン、リン酸塩などが含まれる弱アルカリ性の液体液体-通常「涙」-と呼ばれるものが溢れそうになった。
(って、本当にDX7のBGM流れているじゃないかよー?! 村の名前もフィッシュベイって1字違いだけだし... これはどんな世界なんだよ!)
(だから、マスターが好きなDKXの…)
(だからって、これは一応現実の世界で、もしここで死んだら本当に死んでしまうって言ってただろう?)
(そうですけど…ちょっとは遊び心をもっていてもいいかなと)
歯切れ悪く答えるシーノ。
(だったら、ゲームの世界のBGMを流すなんてヘタな演出はやめてくれっ。それに村人に聴かれたらどうするんだよ?)
(わかりました。すぐ止めます。でも、安心して、マスター。このBGMはマスターにしか聴こえていないから)
(!…)
返す言葉もないオレだった。
懐かしすぎるBGMは消えて、波の寄せる音と遠くでカモメらしい海鳥が鳴いている声が聞こえるだけとなった。
気を取り直して、今出てきた方をふり返って見てみると、こじんまりとした板壁とカヤらしい草葺の自分の家の周りには、多少大きさに違いはあるが同じような造りの家がそこかしこにある。
ざっと見渡したところ、30軒ほどの家がある漁村のようだ。それらの家の中には小高い山の中腹にあるものもあり、そこへは幅1メートルほどの石段か、ずっと左の方にある坂道を通って行けるようだ。
家の多くはレオの家のように浜辺に近い、波打寄せ際より多少は高いところにある。
左を見ると、300メートルほど離れたところにかなり大きい建造物がいくつか見える。
その中の一つは大きな屋敷のようで、遠くからでも石壁と赤い瓦葺きの屋根が見え、数本の煙突らしいものが見えるのはたぶん暖炉か何かのものだろう。
その屋敷から少し離れたところには同じように石壁で、こちらは灰色がかった瓦葺きの屋根をもつ倉庫らしい大きな建物が数棟見える。
そして、それらの倉庫らしい建物がある場所の右側には、かなり大きい帆船が数隻見える。たぶん、あそこにが船着場で、レオの父親マウロは、あそこに停泊している船の一つにいるのだろう。
砂浜に降りたオレは周りに誰もいないのを確認した。
おもむろに母親からもたされたお弁当のフロシキ包みを倒れないように砂の上に置く。
そして静かにゆっくり息を吸い込むと、次の瞬間、全力ダッシュに入った。
(!)
驚いているシーノを後にして、アデノシン三リン酸(ATP)をアデノシン二リン酸(ADP)とリン酸に(Pi)急速に分解し、ついで(ADPもPiも貯蔵量が少なくすぐ枯渇するので)クレアチンリン酸(CP)を大量・急速に分解し、これらの筋肉パワーターボ出力エネルギーをガスタービンが大量の酸素を消費するような調子で大量に消費し、
つもりだった...
しかし
ドタドタドタ…
(えーっ!全然速く走れないじゃん!100倍パワーじゃないのォ?!)
(なーんだ、自分の能力を試していたの?)
すぐに追いついてレオの肩に止まったシーノ。
(だからさ、アデノシン二リン酸とリン酸とクレアチンリン酸の大量放出により発生するエネルギーで足の筋肉の走行能力は100倍になり、体重も500グラムをわずかにオーバーする軽さになっているのもあいまって、短距離であれば音速の2倍近いスピードで走れるはずじゃなかったの?)
(浜辺で運動会の練習でもしているのかと思っちゃった)
(って、この世界でも運動会ってあるのかよ?)
思わずつっこんでしまった。
(そんなのあるわけないじゃない!)
早速切り返された。
(そうか。ちょっと安心した… って、オイオイ、そうじゃないよ。
何で100倍パワーが出ないんだよ?!力も100倍どころか10パーセントも増えてる気がしないし!)
(あー、エタナール様が言っていた100倍能力ね?)
(そうだよ!)
(あれを開放するには、ある条件が必要なの)
“私だけが知っている” みたいな雰囲気を出しながら得意そうな顔で言う守護天使。
(ある条件?まさか魔王を倒してから、なんて言うんじゃないだろうな)
(まさか!どこをどうやったらレベル1のあなたが魔王を倒せるの?)
またつっこまれた。それもそうだ。
(じゃあ、その条件というのは何だよ?)
(その時が来たら教えてあげるわ)
(情報を出し惜しみしてないで、さっさと教えてくれりゃいいのに…)
(これもすべてエタナール様との取り決めよ)
(オレはそんな事を約束していない!)
(私とエタナール様とのお約束です。シャーラップ!)
(マスターに向かってシャーラップなんて口答えする守護天使なんて初めて見た…)
(私は守護天使ですけど、あなたのドレイでもなければ召使いでもないんですよ)
(ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。まったく弁明だけはたっしゃなヤツだな…)
(なんですって!)
(あ、ゴメン、ゴメン。つい心で思ったことが口に出ちゃった)
(私は口だけが達者な天使ではありません。実行しなければならない時は、ちゃんと実行します!プンプン!)
つい、口がすべって守護天使を怒らせてしまったレオだった。
(あのさ… シーノちゃん…)
(すぐ機嫌をとろうとする!何ですかっ?)
(あのさ、オレのことをマスターって呼ぶのをやめろよ…)
(?)
(ドレイでも召使いでもないんだろ?)
(それはそうですが… 私の名付け親だし。じゃあ、何と呼べば…)
(“レオ”でいいじゃん。マスターより短いし)
(えっ、“レオ”?って、短いからそう呼ばせるのかいっ?!)
また、ツッコまれた。
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