届かない背中

kara

届かない背中

 太敦です。ずいぶん前に書きかけのまますっかり忘れてた…。

 最後にあとがきというか設定を載せています。蛇足かもですが


「くっ…、…」

 敦は少しでも肺に空気を入れようとあえいだ。

「だめだよ、抵抗しないで」

 太宰はほほ笑みながら、苦悶くもんする表情を見つめている。

 敦はどうにかして彼の行為を止めようともがくが、細くてしなやかな指は、白い首にからまって離れようとしない。喉がひゅうひゅうと鳴った。


「君は生命力が強そうだから、なかなか死なないね」

 太宰がうれしそうにささやく。


 冗談じゃない。こんなところで命を絶やすわけにはいかない。

 まして、尊敬する太宰さんの手でそんな事になっては彼に罪を負わせてしまう。


「だざっ…、」

 彼が首をかしげる。

「なあに?」

「ぼく……死…、っ………」

「大丈夫だよ。大好きな君が死んだら、僕も一緒に心中するから。

 だから、安心して」


 そういってにっこりとほほ笑む表情はとても綺麗だった。

 こんな状況なのに、敦は思わず見惚みとれそうになる。

 しかし、その間にもその指は、首をゆっくりとしかし確実に締め上げていく。


「ぐっ……、」

 敦は異能を発動させようとしたが、人間失格によって無効化されてしまう。

「そんな事したって無駄だよ」

 彼が剃刀カミソリを思わせるような笑みを浮かべた。

 だんだんと視界が暗くなってくる。表情ももうよく分からない……このままだと本当に窒息してしまう。

「……っっ!!」

 とっさに足をバタバタさせると、偶然彼のすねにクリーンヒットした。


「っっ痛っ! もー何するの? あざになっちゃったらどうするんだよ~」

 呑気のんきそうな声で文句を言う。

 この状況で何を言っているんだこの人?! と思いつつ、締めつけが少し緩んだので必死にギリギリと手首つかんで引きがし、

 咳き込みながら一寸ちょっとでも離れようと、ヨロヨロと距離を取った。


 じっと自分に注がれている冷たい視線をジリジリと感じていたが、それが急にフッと緩む。

「あーあ、つまんない。興ががれてしまったよ。まあいいや、このまま他の子の所に行ってこよう」

 まるで子どものような無邪気な声だ…… かすみそうな意識の中で、ぼんやりと場違いな事を思う。


「だざ……」

 まだ息が完全には戻らないが、ひゅうひゅうと喉を鳴らしながら彼を呼び止める。


「どうしたの」

「……その人、ころさないで」

 かすれた声で言う。


「どうかなあ。その時の気分? で考えるー」

「!!」

「嘘だよ。しない」

 クスリと笑いながらそう返す。

「今日だけじゃないですよ……」

「わかんないなー明日の事なんて」


 彼は楽しそうに笑う。

「あ、でもこの続きはまたしてあげるよ。君の事、気に入ってるから」

「……!」

「ふふ、冗談」

 本気かどうか分からない調子でそう言うと、ひらひらと手を振って外へ出ていく。


「あ、」

 彼はなぜか急に立ち止まった。

「?」

「この事、誰にも言わないでね。特に警察には。もしそうしなかったら……」

 いきなり雰囲気がゾワリ、と変わった。

「必ず消してあげるよ」

 今まで見たことがない悪魔のようなくらい瞳で微笑を浮かべる。

「……!!」

 敦はすさまじい殺気を感じて、全身の毛が逆立った。

「じゃあね~」

 太宰はまた元の飄々ひょうひょうとした雰囲気に戻ると、その場を去っていった。


「ぁ……、」

 後を追おうとするが、まだ空気が不足しているのとさっきの格闘で体力を消耗しょうもうしたのか、起き上がる事さえできない。なんとか四つんいでのろのろと移動し、はい倉庫の外へ出てしばらく進んだが、とうとうそこで力つきてしまった。

「………」

 はあはあとあえぎながらふと横を向くと、草むらの中に白い封筒のようなものが落ちている。

「……?」

 手にとって中を改めると、しわくちゃの五千円と折りたたまれた手紙が入っていた。


『これで探偵社に戻るといい。ああ、でも疲れているなら今日は家で休みなさい。また明日』

 そこには丁寧な字でそう書いてあった。


 ……何だこれ。あの人には全部お見通しって事か?

 敦はボロボロの顔でしばらく呆然あぜんとした後 ハハ、と笑いをこぼす。

 大の字になったままひとしきり笑いに身を任せると、だいぶ楽になってきた。

 ふうとため息をつくと、敦は片手を空に向かって伸ばす。


 ――今は追いつけないけど、きっと止めてみせる。

 ぎゅっとこぶしを握り、そうちかうと彼はゆっくりと目を閉じた。


  了


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 初文ストです…!(遅い)


 殺人鬼な太宰。

 周囲に怪しまれてはいるが、尻尾をつかませない。警察にマークされている。

 気に入った人や愛する人を殺していく。

 快楽殺人だが、この世に未練がないのでこんなつまらない所から連れ去ってしまおうという思考。

 敦も殺そうとするが失敗する。敦は太宰の過去を知るが、したっているので自首を勧められない。

 という設定でしたm(__)m

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届かない背中 kara @sorakara1

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