幼馴染に告白されたので「実は私、男なんだ」と言ったら、「実は僕、女なんだ」と返された
青水
幼馴染に告白されたので「実は私、男なんだ」と言ったら、「実は僕、女なんだ」と返された
「好きだ。僕と付き合ってくれ」
ある日、幼馴染のルイに呼び出されて告白された。
私とルイは幼稚園の頃からの幼馴染で、けれど小学生のときにルイが引っ越したので、小学校の途中からは別々の学校だ。高校生になった今も、こうして連絡を取って、時折会ったりしている。
ルイは昔から背が高くてスタイルがよくてイケメンでかっこいい。きっと、学校ではファンクラブができているに違いない。
恋愛関係の話はほとんどしないけれど、きっとかわいい彼女がいるんだろうな、と思っていた。だから――告白されたことに、私はとても驚いた。
「好きって……私のことが?」
「ああ。ずっとずっと好きで、でも告白する勇気がなくて――振られるんじゃないかと思って、なかなか告白できずにいた。でも、僕はもう、自分の気持ちを抑えたままにはできないんだ」
告白されたこと自体は嬉しい。私は昔からルイに憧れていたから。
だけど、私はルイの気持ちに応えることはできない。ルイのことが好きじゃないから、とかそういう理由じゃない。
私はルイに隠していることがある。嘘をついているわけじゃない。でも、途中から意図的に隠しているのだから、もしかしたら嘘と言えるのかもしれない。
私の隠し事、それは――。
「あの、さ……実は私、男なんだ」
「……うん?」
「私、男なんだ。だから、その……ルイの気持ちに応えることはできない。今まで隠してて本当にごめん」
明らかに女物の服を着ていて、スカートも履いている。髪はショートボブで男にしては長い。顔立ちも今でも相変わらず女の子っぽい。
私が黙って立っていれば、誰だって女だと思うだろう。
私がこういった格好をしていて、一人称が『私』なのは、姉によるものだ。姉は昔から私のことを『妹』として溺愛し、女性のように振る舞うように指導した。おかげで、私はまるで女の子のように見える。
しかし、私は男だ。性自認も男であり、よって私は女装家ということになるのだろうか? 私の恋愛対象は女性オンリーで、仲良しの幼馴染といえども男性と付き合う気はない。
ルイだって私が女だと思っていたから告白したのであって、私が男なのだとしたら話は変わってくる。
「ごめんね」
私はもう一度丁寧に謝った。
「……本当に? ナオ、男なの?」
「う、うん……。信じられないというのなら……見せてもいいけど……」
私の股間を見てもらえば、私が男であることは証明される。恥ずかしくはあるけれど、幼馴染のルイになら見せても構わない。だって、男同士だし。
私がパンツを脱ごうとすると、ルイは慌てて止めに入った。
「いい。いいよ。見せなくていいから! 信じるよ、ナオが男だって!」
なぜか顔を真っ赤にさせている。照れ屋なのかな。
思えば、一緒に風呂に入ったこととかなかった。そういう機会があれば、私が男だとバレていたはずだ。
ごほん、とルイは咳払いをすると、
「ナオ、僕と付き合ってくれ」
「あれ? 私の話、聞いてた? 私、男だから――」
「実は僕、女なんだ」
「ふぇ?」
私の口から素っ頓狂な声が飛び出る。
「男っぽい服装してるけど、これは姉貴の趣味で着てるだけで、『僕』という一人称も昔、姉貴に仕込まれたもので……」
「え、え?」
「だから、僕は女なんだあああっ!」
叫びながら私の手首を掴むと、ルイは自らの胸に押し付けた。むにい、と柔らかい感触。男の私の胸とは明らかに異なる、女の胸だった。そしてついでに、ルイは私の股間部に手を触れて「あ、あるっ!?」と驚いていた。
「そっか……ナオ、本当に男なんだね」
「ルイも女なんだね……」
しばらく、私たちは沈黙した。
私はルイの胸の感触を、ルイは私の股間の感触を――味わっていたのかもしれない。それと、お互いにいろいろと整理する時間が必要だったのだ。
やがて。
「僕が女で、ナオが男だとわかったところで、もう一度告白するね」
ルイはゆっくりと深呼吸すると、
「ナオ、僕と付き合ってくれ」
ルイは幼馴染で、かっこよくて、男だと思っていたから断ろうとしていた。だけど、本当は女だった。
女っぽい姿をした男の私と。
男っぽい姿をした女のルイ。
なかなかどうして悪くないじゃない。ある種の調和がとれている。自分で言うのもなんだけど、お似合いのカップルなんじゃないか?
「返事を、聞かせてほしい」
「いいよ。付き合おう」
私が言った瞬間、ルイが抱きついてきた。全体的に私より柔らかな体をしている。彼女の温もりに包まれてずっと眠っていたい。そんな気持ちになった。私の居場所はここなんだ、と強く思った。
「今度さ、お互いに服交換してみようよ」
「それってつまり、私が男っぽい格好をして、ルイが女っぽい格好をするってこと?」
「そういうこと」ルイは頷いた。「似合うかな、女の格好……?」
「似合うよ」私は言った。「似合うだろうけど、でもルイは今みたいな格好が一番似合うんじゃないかな」
「ナオもガーリッシュな格好がよく似合っている」
「ありがとう」
「いえいえ」
そして、幼馴染から恋人へと関係が変わった私たちは、手をしっかりと繋いで夜道を歩きだした。
幼馴染に告白されたので「実は私、男なんだ」と言ったら、「実は僕、女なんだ」と返された 青水 @Aomizu
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