第3章 五兵衛、勝吾、久良人、冬馬、創名

1 行き止まり

僕はとてもとても暗い迷路の様な所で、何かから逃げていた。

急いでいるのに、急がなければいけないのに、走るスピードは驚くほど遅かった。


暗い迷路の中しばらく走っていたが、遂に行き止まりに行き当ってしまった。


遠くからは悲鳴のような声。

何かがぶつかり合うような音。

爆発音とも銃声とも取れるような音。


様々な音や声、怒号が聞こえてくる。

けれども次第に声や音は少なくなり、少なくなり、少なくなり・・・。


僕はどうして良いのか分からず、ただただ震えていた。


「・・・にい。こっち。こっちに、かくれられるよ」


不意に行き止まりの岩陰から子供の声が聞こえた。


僕は藁にもすがる思いで、声のした方に歩くと、言われるがままに、その場所に隠れた。


「・・・にい。ここなら、だいじょうぶ、だよね?」


「うん。ここならあいつも、きがつかない」


僕は言った。

けれども、その声は僕の知ってる僕の声では無かった。


なんだ?

ぼくのこえって、なんだ?

これが、ぼくのこえだろう?


しずかだ。

さっきまで、いろんな、おとや、こえが、してたのに・・・。


ちがう。

おとがする。

しずかな、とてもしずかな、あしおとだ。


ぼくと、もうひとりのこども。

ふたりでかくれながら、いわかげで、ふるえる。


こわい。

こわい。

こわい。


「・・・にい。てをつないで」


ぼくは、そのこの、てをつないだ。

ちっちゃな、ちっちゃな、て。

そのては、ふるえている。

ぼくのほうが、としうえだ。

ぼくは、このこを、まもらないと。


あしおとが、こっちにやってくる。


こわい。

こわい。

こわい。


あしおとは、いきどまりに、たどりつくと、たちどまった。


こわい。

でも、こえをあげたらだめだ。


あしおとは、それきり、やんだ。


ここには、だれもいないよ!

どっかいって!


そもそも、どうして、こんなことに?


こんなはずじゃなかった!

こんなはずじゃなかった!

こんなはずじゃなかった!


ぼくも、このこも、こんなことになるとは、おもってなかった!!


あしおとは、しない。

なにも、きこえない。


もしかして、あいつ、ひきかえしていったのかな?


ぼくは、そーと、ものかげから、かおをだしてみる。


・・・あいつがいた!

かおを、だすまえからこっちを、みていた!

ただただ、むひょうじょうなかおで、こっちをみている!


てには、カタナを、もっている。

カタナは、まっかな、ちで、そまってる!


ぼくと、このこも、ころされる!


こわい!

怖い!!

誰か助けて!!

生き残ってる人は居ないの!?

誰か僕たちを助けて!!

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