第3話 姫騎士リルに導かれ魔道王国ラルサに到着
負傷していた鎧の少女は「リル」と名乗った。
サファイヤのような
「それ……結構重いんですけど力持ちなんですね?」
リルが驚く。
言葉は幸い日本語と殆ど同じだ。
そのように設計した亜人の文明だからだ。
「軽い、軽い」
蓮はニヤっと笑う。
地球の15世紀くらいの
しかしこのスーパーアースである惑星アーキペラゴの表面重力波0.65gとかなり低い。亜人たちはそれにあわせた筋力であったし、金属なども軽めになるように宇宙開発機構が
リルは戦闘で負傷していたが、蓮の持っていた携帯救急品セットの止血帯と食塩水、痛み止めでかなり楽になったようだった。
「高名な錬金術師の作った薬ですか? それとも神種族というのは本当?」彼女が問う。
「そう、神種族。前々からこの世界を監視していたんだ」
リルは畏敬と疑うような感情の混じった視線で蓮を見つめる。
蓮はリルの荷物と武器を全部持ち、彼女の道案内にしたがって歩いた。
どの道行く場所はない。相変わらず通信機も反応しないし、この世界……この大陸のこのあたりの通貨も食料も何も持っていない。蓮はとりあえず知り合いになったリルについていくつもりだった。
たまに衛星リンクで敵の位置を確かめつつルートを選定し、数日ほどで彼女の国に帰り着いた。
魔道王国ラルサ……それがリルの国だった。
魔法に優れた新興の国だが、ここのところヴェレス帝国による攻撃で敗退を重ねているらしい。
国の人口は100万人ほどで、首都ラルサ以外にいくつかの都市があるとのことだった。
リルがつれてきたのは帝国との戦争の拠点のひとつとなっている学園都市ウルクだ。
蓮はその奇妙な都市をながめまわした。
背の高い大理石のような巨大な岩を重ねて作った城壁。
戦時中のためあちらこちらに
「ここが学園都市ウルクです! この大陸で一番の魔道学校があるんですよ」
リルが胸をはる。
「ほぅー」
蓮は
「ふふふ、なかなか凄いとこでしょ?」
「いや、ほんとうにそうだね」
蓮は調査船からこの都市はみたことがあった。しかし肉眼で見るの初だ。おもったよりも壮麗で巨大な建物だった。
だいたいこのラルサのことも知っている。
あらためて意識を集中し、常磐重工製の脳内チップから設定データベースにアクセスし、リルに案内されながら一通りの情報を読んでおいた。
衛兵は彼女の姿をみるとあっさり通用門を開けてくれた。
「殿下―!」
大声がする。
みると白髪だが大柄の男が馬に乗って駆けてきていた。
リルの鎧と同じような陶磁器のような質感の鎧を身に着けている。
「アラルガル伯爵!」
「ご無事でーっ!」
その老人……アラルガル伯爵は馬から飛び降りんばかりにして二人の前に降り立った。
「後方に配置していた魔道騎兵師団が壊滅したと聞き……行方知れずとなったリル殿下をお探ししておりました」
「いいのです、この方に助けていただきました」
「おっそういえば……どなたですかな?」
アラルガルの目にはリルしか入っていなかったらしい。
リルは一瞬考えたようだが、すぐに答えた。
「遠方からこられた偉大な賢人のようでこの大陸にない秘術をお持ちです」
「ほう……それはそれは……」アラルガルの態度が軟化する。
「このレンという方は、不思議な術で私を助け、ここまで無事に導いてくれました。そこらじゅうにいる帝国兵に一度も出会うこともなくやってこれたのです」
「なんと……」アラルガルは深々と頭をさげた。
「あらためて拙者からもお礼を申し上げる。……ところで」
彼は言葉を継いだ。
「殿下、まずはお客人の歓迎もさることながら、まずは魔道大学のほうへ……3個軍団からなる前線はすでに帝国に突破され、わずかな竜騎士大隊もやられてしまったようです……」
「事態は深刻ですね」リルの顔が青ざめる。
「ささ、殿下、お客人こちらへ……」
アラルガルの案内で魔道大学という建物に向かう。
この都市の城壁と同じく大理石で出来たかのような白亜の建物で、非常に美しい装飾がなされていた。
このあたりは籠城戦の準備なのか、石積みの家は壊され、そこら中に投石用なのか、あるいは城壁の補修用なのか、石が積み上げられていた。
魔道大学といわれた建物はどうも司令部としても使われているようで、そこら中を兵士が歩き回っていた。アラルガルは蓮に個室をくれた。おそらくこの大学の教師が使っていた部屋なのだろう。こぎれいで居心地がよかった。
――その夜、「遠方からやってきた賢人」としての蓮の歓迎会が開かれた。
その歓迎会の席は蓮が軍師に就任するきっかけとなる席となったのだった。
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