-56- 「黒い子」

 学校から帰ってきて、ただいまと言うと、おじいちゃんが奥から出てきて出迎えてくれた。


「おかえり。学校でしっかり勉強してきたか?」


 と、にこにこしながら話すけど、その顔がすぐに強張り、玄関の扉の方を睨み付ける。


「真実、お前は一体何を連れて来た」


 その言葉に僕が振り返ると、真っ黒いモヤモヤした子どもくらいの大きさのイキモノが、玄関の中に立っていた。


「真実、待っとれ。すぐ追い出してやるからな」


 そういうと、おじいちゃんはドタドタと家の奥へと入っていき、何かを持ってすぐに戻ってきた。


 台所にあった、塩の袋と、お酒の瓶だ。


「出て行け、バケモンが」


 おじいちゃんは黒い子どもに、塩の袋から塩を手掴みで何度か投げつけ、そしてお酒を口に含んでぷーっと霧吹きの様に吹き付け、最後には袋と瓶が空になるまで塩とお酒をぶっかけた。


 ダメージを負った様には見えなかったけど、そいつは家の外へと逃げて行った。


 その後も、家の外で時々そいつを見るけれど、おじいちゃんを遠巻きに観察して、見つかって睨みつけられるとぴゅーっと楽しそうに逃げる様になった。


 塩とお酒をぶっかけられている時も、何だかちょっと楽しそうだった。


 実のところ、僕とそいつは以前から、会うと会釈を交わす程度には知った仲だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る