第33話 風土病の解決

 私は、部屋に戻ると、今回の風土病に効果が高いと思われる薬を調合していく。

薬草や聖水を掛け合わせていくことで、薬となる。


「こんなもんですかね」


 三時間ほどかけて約60本の薬を作成した。

ガラス製の瓶に入った薬は綺麗に木箱に詰める。


 これだけ作ったら足りなくなるということはないだろう。


「明日、皆さんに配るとしましょう」


 時間はもう、深夜と呼ぶべき時間である。

明日の朝から病院で治療している人たちに飲んでもらうことにする。


 私は、白衣を脱ぐとベッドに横になる。

そのまま、やがて意識を手放した。


 

 ♢



 翌日、私はいつもより少し早い時間に目を覚ます。


「準備しましょう」


 身支度を整えると、椅子にかけてあった白衣を羽織る。

そして、深夜に作った薬たちを持って部屋をでた。


 部屋を出て、階段を降りた所で領主様とライムントさんが話をしていた。


「おはようございます」

「おはよう。それは、薬かね?」


 私が持っている木箱に入っている瓶を見て領主様が言った。


「はい、そうです。これで、風土病の根本的な解決になると思います」

「そうか。それはよかった」


 領主様は優しい笑みを浮かべる。


「サクラさん、お持ちしますよ」

「すみません。ありがとうございます」


 ライムントさんが、私が持っていた木箱を受け取った。


「どこまで運べばいいですか?」

「病院までですが、お話はよろしかったのですか?」


 私は、領主様の方に視線を移す。


「私の方は構わんから行ってきてくれ。領民の命が最優先だ」


 政治の世界で生きている人間が、ここまではっきりと断言するのは珍しい。

こんな領主様の元なら、領民も幸せだろう。


「ありがとうございます。では、行ってきます」

「ああ、気をつけてな」


 領主様に見送られて私は、ライムントさんと共に病院へと向かう。

しばらく歩いて病院へ到着した。


「おはようございます」

「サクラ先生、おはようございます。それで、解決策は見つかったのでしょうか?」


 院長先生が、不安と期待が入り混ざったような視線を向けてくる。


「ええ、見つかりました。原因は毒竜の毒が飲料水に溶けたことです。それが体内に蓄積して体調を崩したのでしょう」

「なるほど。確かに、毒竜の毒は汗や尿では排出されませんからね……」


 院長先生も毒竜の保有する毒の特徴は知っているようである。

まあ、医療に携わる人間なら基本的な知識ではあるが。


「そこで、特効薬を作ってきましたので、患者さんたちに飲ませてください。意識がない方には点滴で直接投与してもらって構いません」

「分かりました。すぐに取り掛かります」

「ライムントさんも手伝ってもらえますか?」

「もちろんです」

「ありがとうございます。では、意識のある患者さんにはこれを直接飲ませてください」


 そう言うと私たちは早速取り掛かる。

私とライムントさんは意識のある患者さんに特効薬を飲ませる。


 院長先生は意識がない患者さんに点滴による投薬を開始した。


 すると、改善の症状がすぐに現れた。


「痛く、ない」

「すごい、治ったみたい」


 患者さんたちからは歓喜の声が上がった。


「どうやら、ちゃんと効果が出てくれた見たいですね」


 その様子を見て私は胸を撫で下ろす。


「さすがですね。サクラさん」

「いやぁ、本当にすごい。私どもではどうしようも無かった病をこんなに短時間で解決してしまうなんて」


 院長先生も感激していた。


 解決までにかかった時間は約3日だ。

これは、早いとしか言えないだろう。


「ありがとうございます。薬が効いたみたいで何よりです。では、私たちは教会に居る患者さんたちにも薬を届けますのでこれで」

「分かりました。よろしくお願いします」


 私は全員、薬の効果が現れたのを確認すると、教会へと向かう。

ライムントさんが持っている木箱には半分ほどの特効薬が残されていた。


 病院から数分歩き、教会に到着する。


「サクラ先生、それは?」


 レラルがライムントさんが持っている木箱の中身を見て言った。


「特効薬です。これを患者さんたちに飲ませてください」


 先ほど同様、特効薬を教会の患者さんたにも飲ませた。

こちらには、軽度の症状な方が多いので、効果も一瞬で現れた。


 これで、ウェルンの街で流行った風土病は解決したのだった。


 

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